■目次
ジルコニア製のインプラント体
ジルコニア製のインプラント体は、チタン製のインプラント体にあったデメリットを解消し、チタンアレルギーの方でもインプラント治療を受けることができるようにと開発された新しいインプラント体です。
ジルコニアとは人工的に作られたダイヤモンドのことで、非常に高い耐久性が特徴です。
非金属で審美性が高く、強度も十分なため、近年ではセラミックの代わりに白い被せ物に使用されることも増えていますね。
ジルコニア製インプラント体のメリット
ジルコニアで作られたインプラント体は、金属アレルギーが心配な方にとって、より安心して使える素材だといえるでしょう。
さらに、従来のチタン製のインプラント体は歯茎から金属の色が透けてしまうデメリットがあります。ジルコニア製のインプラント体は色が白いため、歯茎から透けて金属の色が見えてしまうデメリットを解消することができるのです。
もちろん、ジルコニアは身体との親和性(生体親和性)も高いので安心してインプラント体の主材料として使用することができます。
さらに、ジルコニアにはプラーク(歯垢)が付きにくいといわれています。大きなメリットではないでしょうか。
ジルコニア製インプラント体のデメリット
一方で、ジルコニアインプラント体にはデメリットもあります。
ジルコニアインプラント体はまだ日本国内では承認されておらず、歯科医院が独自に海外から製品を取り寄せなければなりません。
海外から医療機器を輸入して治療をおこなうことは、輸入者である歯科医師の責任の下に行う分には許可されているため問題はありません。
しかし、治療を行っていた歯科医院が閉院した、医師が退職した場合などに、トラブルが起きた時のサポートなどを受けることができなくなることがあり、注意が必要です。
また、治療後にトラブルが起きたため他院を受診しても、取り扱いがなく対応できないと言われてしまうケースもあるのです。
費用も関税がかかるため、一般的にはチタン製のインプラント体を用いた治療よりも料金が高くなる傾向にあるようです。
ジルコニアアバットメントを使用
インプラント治療では、人工歯とインプラント体を接続する部品「アバットメント」のジルコニア製品もあります。
従来はアバットメントもチタン製ですが、歯茎より上に露出している部分であり、歯茎が退縮したり、被せ物の形状によっては金属が目立つ可能性がありました。
ジルコニア製のアバットメントは白いので目立ちにくく、被せ物と一体化して見えるというメリットがあります。
何より、アバットメントをジルコニアで作る最大のメリットは、耐久性の高さだといえるでしょう。
アバットメントは、人工歯が噛んだときに伝わる衝撃を受け止める役割を担っており、歯茎や顎の骨への負担を和らげるのに重要な部品です。
一方、強度が高い分、柔軟性が低く、過剰に強い力がかかると折れてしまうデメリットも持ち合わせています。
噛み合わせが非常に強い方や、ぶつかるなど激しい運動を日常的に行う方には適していないこともありますので、ジルコニア製のアバットメントを選択する際には、生活習慣についても考慮する必要があるといえるでしょう。
人工歯もよく選びましょう
ここまでジルコニア製のインプラント体やアバットメントのメリットデメリットをご紹介してきました。
インプラント体やアバットメントをよく選ぶことも大切ですが、併せて人工歯(被せ物)もよく選んでみてください。
人工歯は上部構造とも呼ばれ、最後に被せる歯のことを指します。
人工歯にも金属を使用したものと、金属を使用しない非金属があります。
金属を使用したものであれば、「メタルボンド」が代表的です。
メタルボンドは、金属のフレームにセラミックを焼き付けて作製する白い被せ物です。
金属を使用しないものであれば、「オールセラミック」や「ジルコニア」、「ジルコニアセラミック」が多く使用されています。
インプラント体やアバットメントにジルコニア製を選ぶのであれば、ぜひ人工歯の素材にもこだわりましょう。
ジルコニア製のインプラント体やアバットメントにしても、人工歯に金属が使われていては、人工歯から溶け出した金属が歯茎に染み込み、歯茎が黒ずんでしまう、金属アレルギーが起こる可能性があります。
セラミックやジルコニアといった素材で作られたものであれば非金属なので、見た目にも美しく金属アレルギーの心配もありません。
インプラント治療に使用される被せ物について詳しく知りたいかたはぜひこちらの【素材別】インプラントの被せ物|特徴と費用についてもご覧ください。
まとめ
インプラント治療は、患者さんにニーズに合わせてさまざまな製品が生まれています。
金属をお口の中に入れるのが心配な方は、ジルコニア製品を取り扱っている歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。