インプラント_プロビジョナルレストレーション

インプラント治療はインプラント(人工歯根)を顎骨に埋入することで天然歯のようにしっかり噛むことができる特徴があります。
また、セラミックなどで作られた人工歯をインプラントに接続し、見た目も自然に仕上げることができ、「第二の永久歯」と呼ばれることもあります。

このように機能性や審美性の高いインプラント治療ですが、それだけ精密さが要求されるため、最終的な人工歯を取り付ける前に仮歯(専門用語で「プロビジョナルレストレーション」)を作り、先に噛み合わせを調整していく必要があります。
インプラント治療の工程に着目し、一般的な仮歯との違いや、どのよな目的で仮歯の処置が行われるのかについて、具体的に解説していきます。インプラント治療を検討されている方、ぜひご覧ください。

更新日:2021/03/24

インプラント_プロビジョナルレストレーション

■目次

  1. プロビジョナルレストレーションとは
  2. 「 最終的な被せ物を想定する」とはどういうこと?
  3. 精密な被せ物を作るためには経過観察と評価が欠かせない

プロビジョナルレストレーションとは

「仮歯」という言葉は耳慣れているものだと思います。しかし、仮歯にも大きく分けて2種類あるということはご存知でしょうか。
仮歯には、テンポラリーレストレーション(Temporary Restoration)とプロビジョナルレストレーション(provisional Restoration)の2つがあります。どちらも、最終的な人工歯の作製の前に、暫定的に使用するということに変わりはありません。しかし、通常言われる「仮歯」には、応急処置の意味合いが強いと考えられます。これが、「一時的な」を意味するテンポラリーレストレーションです。テンポラリーレストレーションは支台歯の保護や一時的なメンテナンスとして使われる修復物で、プラスチック(レジン)の仮歯を使用します。最終的な被せ物ができるまでの数週間の仮歯です。

一方のプロビジョナルレストレーションは、「pro=前もって」「visional=完成した姿を描く」という意味がある通り、最終的に使用する被せ物を想定しながら作る仮歯となります。ただ単に「歯がない状態」を防ぐために仮歯をはめるのではなく、最終的な被せ物を調整していくために仮歯をはめるということになります。そのため、一般的な仮歯よりも精密さが求められ、ただ見た目を似せて作るのではなく、CADCAMシステムを使って最終的な被せ物を細部まで再現しながら作られることもあります。ただし、あくまで仮歯となるため材質にはレジンが用いられます。テンポラリーレストレーションよりも長期間に渡って使用することが多いです。

「 最終的な被せ物を想定する」とはどういうこと?

インプラント治療では噛み合わせを慎重に調整していく必要があるため、患者さんにきちんと適応しているかをプロビジョナルレストレーションによって考察していきます。噛み合わせはもちろんのこと、歯周治療や予防治療、それに審美性といった観点からも被せ物の形態を確認しながら調和していきます。

プロビジョナルレストレーションのメリットとして、歯肉の形態を整えやすいという点があります。被せ物と歯肉がフィットすることで歯周の健康が守られますが。歯肉を切除せずに仮歯を使うことで歯肉のラインを少しずつ調整してきれいにすることが可能になります。

被せ物を装着する際に大切なことのひとつが、噛み合わせの調整です。噛み合わせは食べ物をより細かくしっかり噛めるだけでなく、全身の健康にも影響を与えると考えられています。患者さんのお口に合うか、精巧に作られた仮歯で調整していくことで、最終的な被せ物の噛み合わせがしっかり適合するようになります。
仮歯で噛み合わせを調整するメリットとしては、削りすぎた部分の高さを戻せる点にあります。天然歯は一度削ってしまうと元に戻すことはできませんが、仮歯であれば噛み合わせを調整しやすくなります。

さらに、治療後に被せ物やその周囲を清潔に保てるよう、プラークコントロールの観点からも形態を調整する必要があります。これにより、インプラントの寿命を長く保つことができます。

また、仮歯が人工物を入れる際の「ウォーミングアップ」になるという考え方もあります。
インプラントはチタン合金でできており、生体親和性があるとされています。それでも顎骨としっかり癒着するまでは慎重に扱わないと、インプラントの離脱につながるおそれがあります。
そこで、先行して仮の被せ物をしておくことで振動が軽減され、顎骨がインプラントに慣れるための期間としても活用することができます。

精密な被せ物を作るためには経過観察と評価が欠かせない

このように、最終的な被せ物を完成させるためには、あらゆる観点から仮歯を使った経過観察を行う必要があるといえます。得られたデータを適切に評価し、製作物に落とし込んでいくことで、インプラントを長く使える形態へと整えることができます。

また、仮歯を作って確認期間を経るという工程を加えることで、最終的な被せ物をより理想に近づけることにつながります。プロビジョナルレストレーションを経ることで、スムーズに最終調整を進められます。結果、治療期間の短縮や調整回数の少なさにつながり、患者さんの身体的な負担が減って、気持ちの良いインプラント治療にもつながるのではないでしょうか。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。