入れ歯がより使いやすくなる!?インプラントオーバーデンチャーとは?

インプラントオーバーデンチャーとは、少ない本数(1~4本)のインプラントを埋め込み、入れ歯をより安定させることができる治療法です。現在使用している入れ歯が外れたり、ガタついたり、痛みが出るといったお悩みやストレスを抱えている方はインプラントオーバーデンチャーを検討してみてください。

更新日:2021/02/26

入れ歯がより使いやすくなる!?インプラントオーバーデンチャーとは?

■目次

  1. インプラントは入れ歯にも利用できる
  2. インプラントオーバーデンチャーの構造
  3. アタッチメントの種類
  4. ボールアタッチメント
  5. 磁性アタッチメント
  6. ロケーターアタッチメント
  7. バーアタッチメント
  8. インプラントオーバーデンチャーの利点
  9. インプラントオーバーデンチャーの注意点
  10. インプラントオーバーデンチャーのご検討を

インプラントは入れ歯にも利用できる

埋め込んだインプラント(1~4本)を土台とし、入れ歯を固定する治療法です。ブリッジタイプのインプラント治療よりも、インプラントを埋め込む本数が少なくて済むため費用が抑えられ、手術の負担も軽減できます。
入れ歯と埋め込んだインプラントを固定するので、食事や会話の途中で外れる、ずれるなどの入れ歯の違和感や悩みを解決できるでしょう。
また、インプラントオーバーデンチャーは総入れ歯だけではなく、歯を多く失った場合の部分入れ歯にも応用することが可能で、入れ歯の横揺れや沈み込みを抑えることができます。

インプラントオーバーデンチャーの構造

インプラントオーバーデンチャーも一般的なインプラント治療と同様にインプラント体(フィクスチャー)を埋め込みます。埋め込んだインプラント体にアタッチメントと呼ばれるパーツを取り付け、入れ歯の内側にもアタッチメントと連結するためのパーツを取り付けてインプラントを固定します。
一般的なインプラント治療のような固定性ではなく、患者さん自身で取り外しができ、入れ歯やインプラントの清掃(お手入れ)がしやすいのが特徴です。

アタッチメントの種類

インプラントオーバーデンチャーのアタッチメントはいくつか種類があり、それぞれに適応できる条件が異なるため、お口の中の状態や利点・欠点を考慮し適切に選択をします。
代表的な4つのアタッチメントを紹介します。

ボールアタッチメント

埋め込んだインプラント体にボール状になっているアタッチメントを取り付け、入れ歯の内側に金属製のキャップ、またはゴム製のリングを取り付けインプラントと入れ歯を固定します。入れ歯を支える力が弱くなってきた場合には、入れ歯側に取り付けているゴム製のリングを交換して維持力を高めたり調整を行います。

磁性アタッチメント

埋め込んだインプラント体に磁性のアタッチメントを取り付け、入れ歯の内側にマグネットを取り付けることでインプラントと入れ歯を磁力にて固定します。複数あるアタッチメントの中でも構造がシンプルなため、取り外しが容易ですので、指先がうまく動かせない高齢者の方に適したアタッチメントです。

ロケーターアタッチメント

埋め込んだインプラント体にボタンのような形状をしたパーツを取り付け、入れ歯の内側に樹脂製のキャップを取り付けインプラントと入れ歯を固定します。入れ歯側に取り付けるキャップにはいくつか種類があり、キャップの硬さが色分けされており維持力をコントロールすることができます。磁性アタッチメントと比較し、入れ歯を固定する力が強いため、指先の力が弱い方やうまく動かせない高齢者の方では入れ歯の取り外しが難しいことがあります。
加齢とともに力が衰えてきた際はキャップを変更し、患者様が外せる範囲で、食事が行えるようにコントロールします。

バーアタッチメント

埋め込んだ複数のインプラント体を金属のバーで連結し、入れ歯の内側に金属製、樹脂製のクリップを取り付けインプラントと入れ歯を固定します。そのため、骨が柔らかい上顎のインプラントオーバーデンチャーの場合に使用する場合が多いです。
一方で、バーアタッチメントはほかのアタッチメントと比較すると、大きなバーやクリップが必要なため、装置を使用するための大きいスペースが必要となります。また、複数のインプラントを連結するため、型どりなどにおいて、高い精度が要求されます。

インプラントオーバーデンチャーの利点

・安定した噛み合わせが確保できる
全ての歯を失ってしまった場合や奥歯がなくなってしまった状態(遊離端欠損=ゆうりたんけっそん)において安定した噛み合わせを構築できることが最大の利点といえます。
通常の総入れ歯の場合は、前歯で噛むようには調整されておらず、奥歯で噛むように調整されています。そのため、前歯でそばを噛みたいといったご希望、笛などの楽器やシュノーケルを義歯の前歯でくわえたいといったご希望の際にも有用です。

・顎の骨、入れ歯を長持ちさせることができる
歯がないと顎の骨はどんどん痩せていってしまいます。特に顎の骨(顎堤=がくてい)を土台としている一般的な総入れ歯の場合は、経年的に入れ歯と顎堤に隙間が生じ、入れ歯が合わなくなる、噛み合わせがずれてしまうなどの変化が起きてきます。
インプラントは、埋め込んだインプラント周囲の顎の骨が痩せるスピードを遅らせることができる働きがあります。その働きを利用し、インプラントオーバーデンチャーにすることにより、入れ歯と顎堤の隙間が生じにくくなり、安定した状態を維持できます。結果、顎の骨と入れ歯両方の長持ちにつながるのです。

・取り外しができるので清掃がしやすい
全ての歯科治療に言えることですが、治療後のご自身でのケア、メンテナンスはとても重要です。埋め込んだインプラントに取り付けるアタッチメントの種類や入れ歯の構造によってはご自身での清掃のしやすさが異なりますが、インプラントや入れ歯を長持ちさせるためには、日々のお手入れが必須です。
入れ歯は取り外しができるため、口の中から取り出して清掃を行い、インプラントの周囲は専用の歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスなどできれいに磨きます。

・治療後のお口の中の変化、生活環境の変化に対応しやすい
インプラントが少ない本数でも安定させることができるインプラントオーバーデンチャーですが、治療後さらに使用感の向上を求める患者さん、関心が高まる患者さんもいらっしゃいます。インプラントオーバーデンチャーの治療後のこのようなお気持ちにも、インプラントを追加することで可能です。また、埋め込むインプラントの本数が増えた場合は入れ歯タイプからブリッジタイプ(固定性のインプラント治療)に変更できるといった患者さんの希望に沿った治療に対応がしやすい治療といえるでしょう。
また加齢とともに、ご自身でのケアが難しくなってきた場合、つまり要介護の状態になってしまった場合も、インプラントをスリーピング(インプラントを使用しない)し、入れ歯だけ使用することも可能です。
上記で説明したように取り外しが容易なので介護をする方もお手入れがしやすく、埋め込んだインプラントでお口の中を傷つけてしまう、清掃が行き届かず炎症が起きてしまうといったトラブルを防ぐことができます。

インプラントオーバーデンチャーの注意点

・歯科医院での定期的なメンテナンスが必要
お口の中の状態の確認や入れ歯の調整、清掃などの歯科医師や歯科衛生士による定期的なメンテナンスに通う必要があります。インプラント治療に共通することですが、顎の骨の状態のチェックや埋め込んだインプラントの周りが炎症(インプラント周囲炎)を起こしていないかはご自身では確認できないことですので、しっかり経過を観察してもらわなければいけません。

・ご自身でのセルフケアが重要
こちらは繰り返しになりますが、インプラントを入れたら治療は終わりではなく、長持ちさせるためには毎日のセルフケアが欠かせません。
入れ歯は取り外してのお手入れが可能で、一般的な固定性の(取り外し式ではないもの)インプラント治療と比較してお手入れがしやすいので、入れ歯やインプラントの清掃を習慣づけましょう。

・パーツの交換や入れ歯の維持費がかかる
一般的なインプラント治療よりも初期費用を抑えて作ることができますが、入れ歯の修理や人工歯の修理、経年劣化によるパーツの交換などの維持費がかかります。定期的なメンテナンスやセルフケアを怠ったり、入れ歯の不具合を放置していると入れ歯を作り直さないといけなくなる可能性が出てきてしまいますので、定期的なメンテナンスに通っていただくことが結果的に維持費を抑えられることにつながります。

インプラントオーバーデンチャーのご検討を

インプラントオーバーデンチャーは入れ歯と比較して満足度が高いという報告がされています。※
欧米では下顎に歯が一本もない場合は、2本のインプラントを埋め込み、インプラントオーバーデンチャーを作製することが、治療の第一選択とされております。少ない本数のインプラントでも安定した噛み合わせを得ることができ、お手入れもしやすいということからも、超高齢社会の日本において、さらに注目される治療法になるでしょう。

インプラントオーバーデンチャーは、費用の面からインプラント治療に踏み切れなかった方や要介護を見据えた治療の選択肢としても有用な治療法といえるのではないでしょうか。この機会にご自身、またはご家族の方の治療にインプラントオーバーデンチャーを検討していただければ幸いです。

(※参照:オーバーデンチャーに対する評価の変遷

記事提供

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。