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インプラントの上部構造に使用される素材
歯を全て失ってしまった場合、取り外し式の義歯の他に、インプラントを支えにした固定式の治療法が選択できます。インプラントの本数はすべての失った歯の数だけ必要なわけではなく、必要十分な数を用いて本数を抑えることができます。使う数によってオールオン4、オールオン6などと呼ばれることもあります。その際に、インプラントに取り付ける人工の歯にあたる“上部構造”には、いくつかの種類があります。
① レジン
取り外し式の入れ歯に使用されている材料と同様の樹脂(プラスチック)でできた材料です。修理や改変が行いやすく、安価であるという利点がありますが、長期に使用すると破折、変色、摩耗を生じやすいという欠点があります。また、強度を出すため金属による補強が必要です。したがって、レジンは最終的な修復材料ではなく、長期に使う仮歯として使用する材料と考えるのが妥当です。
② セラミック(ポーセレン、e-max)
メタルフレームやジルコニアフレームの上に、透明度の高いセラミック(陶材)で補修するために使用します。審美的ですが制作工程が煩雑になるため価格が高価になります。セラミック部分の経年的な変色は少ないですが、長期的には破折してしまうことがあります。
③ ジルコニア
強度のあるセラミック材料で、破折のリスクを減らすことができます。デジタル技術の進歩により②で紹介したセラミックに取って代わって多く使用されるようになってきています。慣れるまで噛んだ際のカチカチという音が気になる場合がありますが、審美的で長期の安定性も高い材料です。
主に以上の材料が、歯のない顎を固定性のインプラントで治療する場合の選択肢となります。どういった材料が治療費用に含まれているのか、担当医とよく相談し、納得して治療を受けるための参考にしてください。
歯を全て失った場合には、インプラントによる固定式の治療の他に、インプラントを取り外し式の義歯を安定させるための装置に用いる“オーバーデンチャー”と言う治療方法もあります。インプラントの本数を減らし、費用を抑えることができますので比較してみる価値があるでしょう。
インプラントオーバーデンチャーについて
義歯の安定性が悪い場合に、義歯を維持・安定させるための補助装置としてインプラントを利用することができます。歯を全て失った“無歯顎”の治療法の選択肢として、特に入れ歯の安定を得ることの難しい場合には、この“インプラントオーバーデンチャー”が有効です。前述した固定式のインプラント治療と比べ、少ないインプラントの本数(2~4本程度)で、治療コストを抑えることができます。
とくに無歯顎の下顎では、義歯の床を支えている歯肉の土手の面積が少ないことや、動きのある舌や唇の影響を受けやすいので、義歯の安定を得るのが難しいケースも少なくありません。このことから、欧米ではインプラントオーバーデンチャーは、無歯顎の下顎を治療する第一選択肢とすることが提唱されており、スタンダードな治療法と認識されています。また、上顎に対しては、入れ歯が落ちないように利用する利点の他に、口蓋を覆う義歯のプレートの面積を少なくすることで、入れ歯特有の異物感を減らすことができます。
インプラントオーバーデンチャーの義歯を維持する装置“アタッチメント”には、ロケーター、ボール、バー、マグネットなど様々な種類があります。それぞれに装置の構造や維持力などが異なり、顎のスペースや患者さんの指先の力など、ケースに応じて選択します。マグネット以外の主なアタッチメントは、クリップやホックのように、機械的な弾力が維持力を担っています。義歯の取り外しをくり返すことにより力が弱まってきますので、一定期間ごとに部品交換や調整修理が必要になります。インプラントの定期検診、クリーニングとともに、歯科医院でメインテナンスが必要です。
また、義歯の床にあたる部分は、レジンの他に、金属のフレームを組み込み、補強を行うことがあります。アタッチメントの大きさによっては、義歯の厚みが薄くなり、レジンのみでは割れやすいことがありますので、費用と合わせて義歯の材料を相談して選択する必要があります。