■目次
- インプラント手術後に起こりうるトラブル
- 【問題①】埋め込んだインプラントに起きる問題
- インプラントが抜けた・インプラントを支えるあごの骨が痩せた
- インプラントが折れた
- 【問題②】上部構造(人工歯)に起きるトラブル
- 人工歯が取れた・ぐらつきがある
- 人工歯が欠けた・割れた・ひびが入った
- 【問題③】歯茎に起きる問題
- 歯茎が腫れる・出血する・膿が出る
- 歯茎の締め付け感
- 【問題④】その他のインプラントのトラブル
- 噛むと痛む
- 発音がしにくい
- 隣の天然歯(自分の歯)がぐらつき、噛み合わせが変化
- インプラント治療のトラブルまとめ
- インプラント治療の欠点をカバーする保証制度とは?
- 医療機関によって保証内容は異なるの?
インプラント手術後に起こりうるトラブル
歯科インプラントは、あごの骨に埋め入れる「インプラント」と、上部構造とも呼ばれる「人工歯」と、そのインプラントと人工歯を連結する「アバットメント」の3つの部品で基本的に構成されています。
インプラント治療の成功率は、とある研究報告によると、約90%ともいわれており、適切な治療とメインテナンス(かみ合わせの調整やインプラント部分の清掃など)を行えば、長期的に安定した状態で使い続けられるとされています。
しかし、しっかりと噛めていた(使えていた)インプラントでも、突然、何らかの理由で問題が生じてしまう場合があります。ここでは、治療後半年以上たって起こり得る問題について、ご紹介いたします。
【問題①】埋め込んだインプラントに起きる問題
インプラントが抜けた・インプラントを支えるあごの骨が痩せた
インプラントが、あごの骨から抜け落ちたり、インプラントを支える骨が痩せ、歯茎の中に埋まっているはずのインプラント(歯根部分)が見えてくる場合があります。
原因の一つとしては、噛み合わせなどのお口全体の変化があげられます。もう一つは、歯に付いた食べカスやブラッシング不良による磨き残しが、時間がたって“プラーク”とよばれる細菌のかたまりになり、それが炎症を起こした場合です。
これは「インプラント周囲炎」と呼ばれ、初期の段階で治療できれば、あごの骨から抜け落ちることを防げる場合があります。後ほど、詳しく説明します。
また、インプラントを埋め込んだ周囲の骨は少なからず吸収を起こします。吸収によりインプラントの下部構造が見えることも考えられます。
いずれにしても、埋め込んだインプラントに問題が起きた場合は、すぐに歯科へ連絡し、診察を受けて今後の治療方法について、しっかりとご相談されることをお勧めします。すぐに受診できない場合は、舌や指でその部分を触らないようにしましょう。
インプラントが折れた
インプラントが折れてしまうケースもあるようです。その場合も同様に、すぐに連絡して受診し、原因と今後の治療方法について検討してもらいましょう。
【問題②】上部構造(人工歯)に起きるトラブル
人工歯が取れた・ぐらつきがある
人工歯やアバットメントをネジで連結している場合は、それらをつなぐネジが緩んでいるか、部品が折れている可能性があります。その場合は、ネジを締め直すか、部品を交換することで、再びお口の中で使うことができます。
人工歯をセメントで固定している場合は、セメントが流出して緩くなっている可能性がありますので、洗浄をして新しいセメントで付け直せば、使うことができます。
このセメントで固定するタイプの人工歯が頻繁に取れるような場合は、人工歯がお口の状態に合っていないことも考えられますので、歯科医師と相談しましょう。
人工歯が欠けた・割れた・ひびが入った
打撲や、硬すぎる物(氷や食べ物に混じった石など)を噛むなど、インプラントに強い衝撃があると、天然歯(自分の歯)と同じように、人工歯も欠ける・割れる・ひびが入ることがあります。
インプラントやアバットメントに異常が無ければ、人工歯を補修、または作り直しをすれば、再び使うことができます。
衝撃を受けていないのに、このような状態になった場合は、噛み合わせなどに問題があることが考えられます。診察を受け、問題点を改善してもらいましょう。
【問題③】歯茎に起きる問題
歯茎が腫れる・出血する・膿が出る
インプラント周囲の歯茎の腫れや、出血したり膿が出たりする場合は、「インプラント周囲炎」の可能性が高いです。歯科に連絡し診察を受けましょう。
インプラントの周囲に付着した細菌のかたまり(歯石やプラーク)を落とし、洗浄と消毒をなんども続けていると症状が落ちつくこともあります。放っておくと、インプラントを支える骨が吸収して、抜け落ちることも考えられますので、早めに診察を受けましょう。
>>インプラント周囲炎とは
歯茎の締め付け感
歯茎に締め付けるような違和感がある場合は、インプラントの上部構造と歯茎が強く接触している可能性があります。この場合、血流が不足し歯茎が下がることが考えられます。人工歯を外して洗浄と消毒を行い、締め直しをすると落ち着くこともあります。まずは、受診して原因を検討してもらいましょう。
【問題④】その他のインプラントのトラブル
噛むと痛む
噛むと痛む場合は、噛み合わせに変化が生じた場合や、インプラント周囲の粘膜が炎症を起こしている可能性があります。早めに診察を受けましょう。
発音がしにくい
人工歯を装着して半年以上経っても、発音がしにくい場合は、人工歯の形態修正や新しく作り換える必要があるかもしれません。歯科医師とよくご相談ください。
隣の天然歯(自分の歯)がぐらつき、噛み合わせが変化
インプラント治療の隣の天然歯がぐらつくことで、お口の中の噛み合わせの状態が変化し、インプラントに大きな負担がかかる恐れがあります。放っておくと、インプラントが破折することも考えられますので、早めに診察を受けましょう。
インプラント治療のトラブルまとめ
インプラント治療が終了して、半年以上経過したあとに起こり得る「トラブル」についてご紹介してきました。
インプラント体そのものに起こるトラブルや上部構造(被せ物・人工歯)のトラブル、歯茎や骨のトラブルなど「トラブル」にも様々なケースがあることをご理解いただけたかと思います。
インプラント治療において考えられるトラブルは人それぞれ。歯周病を持っているなど患者さんのお口の環境によって異なりますし、糖尿病などの全身疾患の有無によっても変わってきます。
さらに、喫煙の有無や、インプラント治療を行う歯科医師の技量も成功率に影響します。インプラントを埋め入れて数ヶ月でインプラントが抜けてしまったケースもあります。
インプラントは神経が通っていないので痛みがなく、炎症が進んでいても自覚症状が出にくいという特徴があります。
天然歯と比較して血流も少なくなるため、インプラント周囲は炎症を起こしやすい環境です。
具体的な症状が出たときには既に手遅れとなり、治療が難しくなる場合もあります。そうならないためにも、インプラント治療後も必ず定期検診を受けましょう。
インプラントの寿命は定期的なメンテナンスによって変わります。インプラントをより長く使い続けたいなら、歯科医院にメインテナンスに行きましょう!
インプラント治療の欠点をカバーする保証制度とは?
インプラント治療の欠点のひとつに「治療費が高額である」ことが挙げられます。健康保険(公的医療保険)が適用されないインプラントは治療費の全額が自己負担。インプラント1本当たりの平均相場が40~50万円であることから考えても、気軽に受けられる治療ではありません。そのため、万が一の再治療の際に患者さんの金銭的な負担を軽減できるよう、ほとんどの歯科医院では保証制度を取り入れています。
インプラントの保証制度とは、インプラント(インプラント体・被せ物を含む)に何らかのトラブルが起きた際に再修復・再手術の費用をカバーしてくれる制度のことです。インプラントにはトラブルがつきもの。定期検診に通っていたにも関わらず歯周病に感染してしまったり、噛み合わせの負担から被せ物が割れてしまったり、スポーツ中の衝撃や交通事故などの思いもよらないアクシデントによってインプラントの再治療が必要になる可能性もあります。そのような万が一の不測の事態に対応してくれるのがインプラントの保証制度。再治療に必要な費用を負担してくれます。
医療機関によって保証内容は異なるの?
保証制度の内容は各医院によって異なります。保証内容は医院独自のルールで決められていることが多く、例えばインプラント体は10年保証であっても被せ物は5年保証である場合や、事故による破損は保証の対象外であるなど、保証対象の範囲や保証期間の長さや保証される金額は医療機関によってまちまちです。インプラント治療後の定期検診に行かなければ、保証されないことが多いです。
また、医院によっては医院独自の保証ではなく、インプラントの保証会社を取り入れているケースもあります。
第三者である保証会社が医院側と患者側の仲介に入り中立の立場で対応してくれるため、保証をバックアップしてもらえるだけでなく、手続きもスムーズ。インプラントトラブルで不安を抱える患者さんの心強い支えとなるでしょう。
既にインプラント治療が終了している方は保証内容について今一度ご確認を!そして、現在インプラント治療をお考え中の方は、アフターフォローの充実度も医院選びの条件として取り入れてみてはいかがでしょうか。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。