インプラントを長持ちさせるために知っておきたいこと

歯科インプラントに関する治療説明『メンテナンス』についてご紹介します。歯を失ってお困りの方、入れ歯・ブリッジが合わない方は是非ご覧下さい。

更新日:2019/09/30

■目次

  1. あなたのインプラントは大丈夫ですか?
  2. 歯と歯肉、骨の密接な関係
  3. インプラント周囲の歯肉
  4. 資料提供

あなたのインプラントは大丈夫ですか?

インプラントの周囲における環境整備の重要性について
まず始めに、「なぜ、インプラント治療を受けなければならなくなったのか?」ですが、歯を失う原因のほとんどが歯の周りの病気、いわゆる歯周病であると考えられています。

周りの歯肉と骨が侵されることで歯を失うのですが、それには、細菌が出す酸による化学的なストレス(ブラッシング不足など)と力による物理的なストレス(歯並びや虫歯治療、欠損部の放置などによる、咬む力のバランスの喪失など)が大きく関与します。もちろんインプラントを入れた場合であっても同様のことがいえます。

化学的なストレスをなくすのはあなた自身であり、毎回のブラッシングです。ブラッシングは、とても重要なのですが、「ブラッシング方法ではなく、それ以前に、ブラッシングできるか?」にフォーカスを当ててみます。

インプラントは金属(チタン)なので、それ自体は虫歯になりません。ですので、その周囲の歯へのブラッシングがポイントになるのですが、問題は、その周囲の歯の粘膜が歯ブラシが当たれば痛い粘膜だったらどうでしょうか?ということです。

しっかりと磨きたくてもても磨けないのではないでしょうか。そもそも歯を失った根源が磨きたくてもても痛くて磨けないことだったかも知れません。インプラントの手術を受けた後には、そうなることをできる限りにおいて避けなければなりません。

もう少し掘り下げて話を進めていきますと、口腔粘膜には、動く粘膜(可動粘膜)と動かない粘膜(非可動粘膜)に分けられます。歯肉は後者に分類されます。ご自身の指や舌で、歯以外のお口の中を強く擦ってみていただければお解りいただけますが、痛いところが可動粘膜で痛くないところが非可動粘膜いわゆる歯肉です。

歯と歯肉、骨の密接な関係

歯と歯肉、骨には密接な関係があり、歯を失うことで歯肉や骨(ここでの骨はあごの骨の中の歯槽骨と言って歯を支えている骨)も減少します。言い換えると、粘膜の可動域が増え、非可動粘膜は減少します。例えば、「入れ歯が歯肉に当たって痛い」などは、可動粘膜に入れ歯が当たっているのが最たる要因と考えられます。

さて、インプラント治療と言えば骨を想像すると思います。侵された骨の形態はどれも違います。しかしインプラントには、長さや太さは数種類あるものの、インプラント体の形を変えるわけにはいきませんので多くの症例で骨の量や質、形態の改善が必要になるといえます。GBR(ガイデットボーンリジェネレーション、増骨、再生療法)や形成などがそれにあたります。

しかし、上記のような骨環境を整備する手術を受ける際、移植材が漏れないように緊密に歯肉を含めた粘膜を縫う必要があるにもかかわらず、増骨によって体積が増しているので(粘膜の体積はそのままのため)、そのままでは手術によってできた創面(キズ口)を閉じられません。そこで歯ブラシが当たると痛い可動粘膜にさらに減張切開(粘膜下のコラーゲン線維などを離断することで張力を減じる方法)を加えることでそれがより動き、一次閉鎖、いわゆる縫えるようになります。ここでのプライオリティーを骨の整備としていますのでいたし方ないともいえますが、こうすると歯ブラシを当てると痛くなります。ですので、治療中は、あまり触れないようにした方がむしろ良いと考えられます。(その間、手術部位にはブラッシングの代わりにうがい薬を使用していただきます。)

そして約6~10ヶ月後、骨の環境が整備されインプラントを無事植立し骨と結合したら、二~三次手術として歯周形成外科手術=プラスティックサージェリーが必要です。それは、動かした可動粘膜を復位する(もとにもどす)手術(口腔前庭拡張術)です。(但し、可動粘膜の移動距離が少なくなお且つ角化歯肉と言って、上記に出てきたコラーゲン線維などのコネクティブティシュー(=線維性結合組織を介して骨と手をつないでいる歯肉の量、いわゆる歯肉の質量)が充分にあれば手術は必要ありません。ただし前歯部など、歯肉の形態的な審美性の問題は別です。)これをしないと食物がその隙間に溜まりやすくなります。そして、これと同時によく行われるのが、ブラッシングをしても痛くないように、インプラント周囲の安定した歯肉環境を整備することを目的とした移植(遊離歯肉移植術=フリージンジバルグラフトなど)や、移動(有茎弁歯肉移動術など)を歯肉の性状に合わせて行う治療です。

その治療の後、インプラントにかかる力のコントロールとして、その上に作製された人工歯(セラミック歯など)の生理機能的な咬み合わせの調整を行います。

インプラント周囲の歯肉

これらのインプラント周囲の歯肉、すなわち歯ブラシが当たっても痛くない非可動粘膜である歯肉と、骨のインフラ(基盤構造)を、エビデンス(科学的根拠)に基づいて治療することで、特に重要な部位であるインプラント周囲の歯肉を、ご自身で難なくブラッシングができるようになります。そこまでの環境作りが担当医の責務なのは言うまでもありません。

以上が、インプラント=移植人工歯根と身体とが長期的・機能的に共存できるポイントだと考えられます。

資料提供

フラワーデンタルクリニック
院長 : 浅井 俊樹先生

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。