■目次
歯科インプラントの始まり
最初は貝殻から始まった!
ヨーロッパでは紀元3世紀頃の人骨の上あごに鉄製のインプラントが、中南米では紀元7世紀頃の人骨の下あごに貝で作られたインプラントが発見されており、とても長い歴史をもっています。その後、金やエメラルド、サファイア、アルミニウムなど様々な素材を埋め込んだ治療が行われましたが、どれも長期的に噛めるものではありませんでした。
現在主流となっているチタン製の歯科インプラントの始まり
チタンと骨の結合の発見
現在のインプラント治療の礎の発見は、偶然によるものでした。
1952年にスウェーデンの学者であるペル・イングヴァール・ブローネマルク教授(1929年~)は、微細血流の研究のため、ウサギの骨にチタン製器具を埋め込んだ実験を行っていました。研究終了後に埋め込んだ器具を取ろうとしたところ、チタン製器具は骨としっかりと結合し取り出すことができませんでした。
これに気付いたブローネマルク教授はこの現象について研究を進め、生活を営む骨とチタンの結合状態をOsseointegration[オッセオインテグレーション]と名付けました。基礎研究を進めるなかで、チタンは身体に対して有害な作用を及ぼしにくい特性があることもわかりました。
※ごく稀にチタンアレルギーを持つ方もいます。不安な方は歯科医師に事前に相談しましょう。
>>インプラントと金属アレルギー
ヒトへの応用
多くの研究を経て、1965年にスクリュー型(ネジのような形)のチタン製インプラント体を用いてヒトへの臨床応用が開始されました。オッセオインテグレーションの概念に基づいたインプラント治療は成功率を飛躍的に向上させ、1980年ごろにはその評価が世界的に広まりました。以降、失った歯を補う方法の一つとして、世界中の歯科治療で取り入れられています。
このブローネマルク教授の最初のインプラント治療を受けた患者様のインプラントは、2006年にお亡くなりになるまで41年間お口の中で機能し続けたそうです。
インプラント製品は世界中で100種類以上存在し、日本国内では30種類以上が使われているといわれています。年々新製品が開発されており、品質のよいものもあれば、何らかのトラブルを抱えているものもあります。インプラント治療を受ける際は治療方法だけでなく、使用するインプラント体の特徴についても把握しておき、納得できるものを選択するようにしましょう。
>>インプラントの種類
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。