All-on-4(オールオンフォー) インプラント治療の流れ

自分の歯が全くない場合に費用を抑えて受けることのできるインプラント治療、All-on-4(オールオンフォー)の治療の流れや治療後のケアをご紹介します。どのような流れで治療は進むのか、治療後はどのようなケアを行えば長く保つことができるのか、歯科医院で治療を受ける前に知っておきたい知識です。

更新日:2020/12/24

■目次

  1. All-on-4(オールオンフォー)とは
  2. All-on-4(オールオンフォー)の治療の流れ
  3. STEP1 インプラントの埋入手術
  4. STEP2 インプラントを埋め入れる
  5. STEP3 仮歯を取り付ける
  6. STEP4 結合期間(3ヵ月~6ヵ月)
  7. STEP5 最終的な人工歯の取り付け
  8. 治療後の清掃について
  9. 「人工歯」部分を清掃する場合
  10. 「人工歯と歯茎の間」や「インプラントの周囲」を清掃する場合

All-on-4(オールオンフォー)とは

All-on-4は、現在総入れ歯の方や、残っている歯を残すことが難しい方に適したインプラント治療です。歯をすべて失っている場合に行われる治療のため、大きな手術が必要なイメージがありますが、バランスよく埋め込まれた4本のインプラントで、10~12本分の固定式の人工歯(入れ歯)を支えることができるため、従来のインプラント治療と比較すると、体への負担が軽減されるだけでなく、費用面の負担も軽くなります。

ここでは、All-on-4の治療が実際にどのように行われるのか、治療の流れについてご紹介します。

All-on-4(オールオンフォー)の治療の流れ

All-on-4の外科手術では、歯茎を切開してインプラントを埋め込むフラップ法と、歯茎を大きく切り開くことはなく、部分的にパンチで穴を開けてインプラントを埋め込むフラップレス法があります。
フラップ法の場合、インプラントが骨と結合した後に再度歯茎を切り開いてインプラントを一部分露出させる「二次手術」が必要になります。
All-on-4治療では顎の骨の状態によって、埋め込む本数が4本より多く増えることもあります。

STEP1 インプラントの埋入手術

■フラップ法(歯茎をメスで切開する方法)
麻酔後、歯茎を切り開き、顎の骨に小さなドリルで穴を開け、適切な場所にインプラントを埋め込むための専用の型(テンプレート)を差し込んで固定します。
その後、埋め込むインプラントと同じ長さ・太さの4つの穴を、テンプレートの上からドリルで開けます。

■フラップレス法(パンチで歯茎に穴を開ける方法)
麻酔後、歯茎の上から小さなドリルで穴を開け、テンプレートを差し込んで固定させます。その後、パンチで歯茎を切り取り、埋め込むインプラントと同じ長さ・太さの4つの穴を、テンプレートの上からドリルで開けます。

フラップ法、フラップレスは、顎に埋め込むインプラントの位置によってはテンプレートを使用しない場合もあります。

STEP2 インプラントを埋め入れる

4本のインプラントをそれぞれの穴に埋め込みます。
人工歯とインプラントを連結する役割を持つアバットメント(または仮のアバットメント)を装着します。
歯茎をメスで切開した場合は、糸で歯茎を縫い合わせます。
アバットメント上部が歯茎の上に出ている状態で、外科手術は終了です。

お口の中の状態によっては、インプラントを歯茎で完全に覆い、感染のリスクを低減する方法もあります。歯茎で完全に覆う場合は、インプラントが骨と結合するまで仮の入れ歯で過ごすことができるため、食事がとれない期間はありません。
安定してから再度歯茎を切り開いてアバットメントを接続し、仮歯を取り付けます。

STEP3 仮歯を取り付ける

外科手術後は、出血が落ち着くまでガーゼを噛み、30~60分間休憩します。その後、噛み合わせをチェックしながら仮の人工歯(10~12本の歯が並んだ人工歯)を取り付けます。(仮のアバットメントを装着している場合は、最終的なアバットメントに交換してから人工歯を取り付けます。)

STEP4 結合期間(3ヵ月~6ヵ月)

手術後、埋め込んだインプラントが骨と結合するまで安静期間を置きます。骨や身体の状態によって異なりますが、一般的には3ヵ月~6ヵ月ほど待ちます。もっと短期間の場合もあります。

STEP5 最終的な人工歯の取り付け

仮の人工歯からお口の中で使い続ける人工歯に替え、噛み合わせのチェックを行います。
お口の状態が安定したと判断されたら、メンテナンス(定期検診)へ移ります。

治療後の清掃について

インプラントは、虫歯になることはありませんが、歯周病と似た症状である「インプラント周囲炎」になることがあります。
原因は、お口の中に残った食べカスやブラッシング不良による磨き残しです。これらは、時間が経つと『プラーク』とよばれる細菌のかたまりになり、インプラントを支える骨や歯茎が痩せ、最悪の場合には、インプラントが抜け落ちてしまいます。
インプラントはプラークや歯石が付着しないというイメージをお持ちの患者さんもいらっしゃいますが、自分自身の歯と同様、人工歯やインプラント本体にもプラークや歯石は付着します。お口の汚れは、身体の抵抗力が低下すると、細菌性肺炎を引き起こすとされています。

インプラント治療後も、お口の中を清潔に保つことはとても重要です。下記のような清掃方法で丁寧に歯磨きを行いましょう。

「人工歯」部分を清掃する場合

歯ブラシで汚れを落としましょう。歯茎や人工歯を傷を付けてしまう恐れがあるため、歯ブラシはあまり硬すぎないものを使用するとよいでしょう。
また、自分自身の歯同様、鏡を見ながら歯1本分を目安に細かく動かして各歯ごとに丁寧に磨くイメージで歯磨きすることが大切です。
ガムやお餅など、歯ブラシでとれない汚れが人工歯にくっついてしまった場合は、歯科医院で取り除いてもらいましょう。長期間くっついたままにしていると菌が繁殖し、口臭やインプラント周囲炎、そのほかお口の疾患に繋がる可能性があります。

⇒歯ブラシ・歯磨き粉の選び方・上手な使い方

【歯磨き粉を使う時のポイント】
インプラント治療を受けた方は、ホワイトニング効果をうたう粒子の大きい研磨剤や強い研磨剤の配合されている歯磨き粉の使用を控えましょう。
人工歯やインプラント本体に傷を付けてしまう原因となります。
また、人工歯と歯茎の間や、インプラント本体と歯茎の間に研磨剤や顆粒が入り込んで残ってしまうと、歯茎の炎症を引き起こす可能性があります。

また、高濃度のフッ素が配合されている歯磨き粉では、フッ素がインプラントの素材であるチタンを腐食させてしまう恐れがあります。
フッ素入り歯磨き粉を使用したい場合は、担当の歯科医師に相談しましょう。

「人工歯と歯茎の間」や「インプラントの周囲」を清掃する場合

歯間ブラシやスーパーフロスなどの補助的清掃用具を使うと、的確に汚れを落とすことができます。なお、人工歯と歯茎の形態によっては、ご自身で磨くことが難しい場合もあります。その場合は、ジェット水流洗口器や、音波歯ブラシなどの効果によって汚れを洗い流す効果を利用する方法もあります。

⇒補助的清掃用具(デンタルフロス・歯間ブラシ)について

歯間ブラシはインプラント本体や歯茎を傷つけてしまわないよう、人工歯と歯茎の間やインプラントと歯茎の間の隙間に適したサイズの歯間ブラシを使用してください。
適したサイズがわからない場合は、歯科医師、歯科衛生士へサイズを確認してみましょう。
無理に隙間に歯間ブラシを通してしまうと、傷付けてしまったり、人工歯がとれてしまう原因となります。


自分に適した清掃用具を使用しているのに、インプラントの周りを清掃すると痛い、出血があるという場合には、歯茎が炎症を起こしている可能性があります。
無理に清掃を続けず、早めに歯科医院を受診してください。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。