■目次
インプラント治療後に歯茎の腫れを引き起こす原因
■インプラント術後の腫れ
次のことが原因で起こっていることが考えられます。
1. 術後の一時的な腫れ(生体反応)
2. 細菌感染
3. 何らかの理由(顎骨の骨質や骨粗鬆症の薬など)でインプラントが顎の骨に結合していない
■インプラント治療が完了した後の腫れ
次のことが原因で起こっていることが考えられます。
1. インプラント周囲粘膜炎・周囲炎
2. 病気やホルモンバランスの乱れによる健康状態不良・服用薬
3. 隣の歯の炎症の波及
*インプラント周囲粘膜炎・・・インプラントの周りの歯茎のみが炎症を起こしている
*インプラント周囲炎・・・粘膜炎が進行して起こり、インプラントの周囲骨が溶ける
・インプラント治療後に腫れた場合の対処法
自分自身で原因を特定し、状態を落ち着かせることはできませんので、インプラント治療を受けた歯科医院に連絡しましょう。必要があれば受診してください。
手術直後の腫れに関して
傷口が治っていく過程で一時的に起こり、やがて治っていくこともありますが、一向に治らないこともあります。個人差もありますが、心配であれば、歯科医院に確認しておくことが望ましいでしょう。
治療が完了した後の腫れに関して
放っておかずに、早めに相談しておきましょう。放っておいたことで、周りにある歯に影響したり、腫れが広がったりすることもあります。
受診するまで時間がある場合は、可能な範囲でブラッシングやうがいなどをして、お口の中を清潔に保ちましょう。また、硬い食べ物や、刺激のある食べ物(辛い物、熱すぎる物)は痛みや腫れなどを誘発する可能性が高いため、避けるようにしましょう。
※腫れが大きく、痛みを伴う場合
近隣の歯科医院と連絡が取れない場合、各自治体で実施している休日や夜間の歯科診療所へ行けない場合は、薬局で薬剤師にアドバイスを受け、市販の痛み止めを一時的に服用するとよいでしょう。また、水道水で濡らしたタオルなどで頬を冷やすことで、和らぐこともあります。しかし、氷や保冷剤など患部を冷やしすぎると、血行が悪くなり、却って悪化する原因になるため避けましょう。
・手術後に腫れが引かない・痛みがあるケース
サイナスリフト(※)などの骨の治療を行ったり、埋入した本数が多い場合は、外科的侵襲が大きいため、腫れや痛みがしばらく残ることがあります。
患者さんの体質などにより、ドクターから事前に説明された期間以上に腫れや痛みが続く方も中にはいますが、しばらくすると落ち着いてきます。この場合は、手術で切開した部位が広範囲のため腫れや痛みが続いているので、インプラント自体の失敗ではありません。
処方された痛み止めをすべて服用しても痛みや腫れがある場合は、速やかにクリニックに連絡し、痛み止めを追加してもらいましょう。
※サイナスリフト:上顎洞底挙上術。上顎奥歯を失い、顎骨が少ない場合に行う骨の再生治療の一つ。詳しくは、サイナスリフトのページをご参照ください。
・インプラント治療した他院で治療を受ける際の注意点
別の歯科医院を探す場合は、同じ種類のインプラントを扱うところを探すとよいでしょう。治療に必要な器具が揃っていなければ、治療を開始するまでに時間がかかることが考えられます。通いたい地域に同じ種類の取り扱いがない場合や、インプラントの種類がわからない場合は、治療を希望する歯科医院に事前に連絡し、診てもらえるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
インプラント治療後に転居が決まった場合はこちら
適切な治療を受ければインプラントは優れた機能を果たします。しかし、すべての患者様に対して最も良い選択肢であるとは限りません。治療を選択する際は、特徴やリスクなどをよく確認したうえで、承諾しましょう。
・インプラント治療後に腫れた場合、歯科医師に伝えること・聞くこと
■伝えておくこと
・腫れに気付いた時期やきっかけ
・腫れてから受診するまでに服用した薬
・インプラントの状態(周囲の歯茎がどうなっているか、動揺しているか)
■聞いておくこと
・日常生活で注意すべき点
歯茎の腫れの多くは、インプラント周囲粘膜炎・インプラント周囲炎など、細菌の増殖が関与しています。炎症が落ち着くまで長くて1週間~10日ほどかかることがあります。歯科医院で処方された抗生物質などの内服薬は最後まで飲みきることで効果が現れます。自己判断で中断すると耐性菌が出現し治りが悪くなるため、やめましょう。
インプラント治療した歯の周辺に痛みが出る原因について
インプラントは、周りの歯、神経、上顎洞粘膜など様々な組織と近接しているところに埋め入れます。ごく稀に、インプラント治療部分が原因となり、周辺の痛みを引き起こすこともあります。
手術直後にその周辺が痛む場合
次のことが原因で起こっていることが考えられます。
1. 手術後の腫れによって、近くの組織が圧迫されている
2. 手術によって、近くにある組織が損傷した
3. インプラントを埋め入れる過程で起こった骨の火傷(オーバーヒート)
4. インプラント治療に対する生体反応(自然なもの)
治療が完了した後にその周辺が痛む場合
次のことが原因で起こっていることが考えられます。
1. インプラント周囲炎
2. インプラントのパーツの緩み
3. 周りにある歯の炎症
4. 噛み合わせの変化など
・インプラント治療後に痛みが出た場合の対処法
自分自身で原因を特定することはできませんので、歯科医院に連絡し、症状を伝えておきましょう。放っておくと、やがて状態が悪化し、お口の機能に影響がでることもあります。インプラントが外れるという可能性も出てきます。
【手術直後にその周辺が痛む場合】
時間の経過とともに治ることもあれば、何らかの処置が必要となることもあります。自己判断せずに歯科医師に相談しておきましょう。
【治療が完了した後にその周辺が痛む場合】
突然現れた強い痛みは、お口の中で何らかのトラブルが起こっていることが考えられます。適切な処置を受けることで、周辺の痛みが改善されることもあります。気が付いたらすぐに連絡し、お口の状態をみてもらいましょう。
・インプラント治療後に痛みがでた場合に、歯医者へ行くときのアドバイス
■伝えておくこと
・痛みだした時期や何をした時に痛みを感じ始めたのか
・受診するまでに服用した薬
・口の中の状態(歯茎の腫れ、痛み、インプラント体の動揺など)
■聞いておくこと
・日常生活で注意すべき点
歯科医院に行く前に痛みが治まったとしても、歯科医師にその症状を念のため伝えておきましょう。お口の状態によっては、検査を受けた後、治療が必要となることもあります。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。