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ドライマウス(口腔乾燥症)とは
ドライマウスは口腔乾燥症 (こうくうかんそうしょう)ともよばれ、ストレスや薬の副作用といった原因によって唾液の分泌が減り、お口の中が乾燥している状態です。唾液が少なくなるとお口の中で細菌が繁殖しやすくなり、口臭を引き起こすケースもあるのです。
2024年4月現在、日本におけるドライマウスの患者数は急増中とされており、800万人以上いると考えられています。
参考:長崎大学病院
ドライマウスの症状
ドライマウスになると、以下のような症状が現れます。患者さん自身で感じられる「自覚症状」以外に、医師などが客観的に捉えることができる「他覚症状」があります。
自覚症状
該当する症状がないかチェックしてみましょう。
・お口が乾く
・喉が乾く
・お口がねばつく
・唾液が泡立つ
・口臭がきつくなる
・お口が痛い
・舌が痛い
・舌がひび割れる
・虫歯ができた
・会話しにくい
・咀嚼しにくい
・味覚がおかしい
・入れ歯が合わない など
他覚症状
・お口が乾いている
・舌の表面の小さな突起が萎縮している
・唾液の分泌が少ない
・唾液の泡立ちやねばつきが見られる
・口腔粘膜が赤い
・虫歯が進行している・増えている
・歯周病が進行している
・入れ歯が汚れている
・口内炎ができている など
ドライマウスの原因
一般的にドライマウスは唾液が少なくなってしまうことで起こります。他にもさまざまな原因が考えられます。原因は一つとは限らず、複数の原因が重なってドライマウスになるケースもあります。
①病気
糖尿病・シェーグレン症候群・腎臓疾患・高血圧症などの病気が原因で、ドライマウスになっている場合があります。
シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一種で、涙腺・唾液腺などに炎症が生じ、ドライアイやドライマウスなどを引き起こします。
②薬の副作用
薬の副作用は、唾液減少を引き起こす主な原因の一つです。
服用している薬の副作用で唾液の分泌機能が低下し、ドライマウスを引き起こすことがあります。特に、循環器官系や精神科系の薬の副作用で起こることが多いです。
薬の副作用がドライマウスの原因と考えられる場合、薬の変更について主治医に相談してみましょう。
③加齢による筋力の低下
加齢もドライマウスを引き起こす主な原因です。年齢を重ねるにつれて、ドライマウスの患者数も増加傾向にあります。
加齢によって咀嚼筋の筋力が低下したり、歯の機能が低下したりすると、噛む力が衰えて咀嚼回数が減り唾液が少なくなる場合があるのです。
④更年期による女性ホルモンの低下
更年期になると女性ホルモンの分泌が減り、唾液の減少につながることがあります。
⑤生活習慣
咀嚼が少なかったり早食いが習慣化すると、唾液が少なくなります。また、口呼吸・喫煙・飲酒などの生活習慣もドライマウスの原因の一つです。
⑥ストレス
唾液腺の活動は自律神経によって調節されているため、ストレスによって交感神経が優位になると、唾液分泌機能が低下することがわかっています。
⑦放射線治療
放射線治療を受けた際に、放射線が唾液腺に照射されて、唾液腺の細胞が破壊されて分泌機能が衰えることがあります。
ドライマウスの対策
ドライマウスになっている場合、以下のような対策で改善を目指せます。
①原因となっている病気を治療する
ドライマウスの原因が糖尿病などの病気にある場合、治療でドライマウスも改善すると考えられます。
②唾液分泌促進薬を服用する
シェーグレン症候群にかかっている場合は、唾液分泌促進薬の適応が可能です。
③よく噛んで食べる
食べ物をよく噛むことで唾液を分泌させることができます。早食いの習慣がある方は、ゆっくり食べることも心がけましょう。
④唾液の分泌を促すものを食べる
レモンや梅干しなど、唾液の分泌を促すものを食べるようにしましょう。
⑤お口の中の乾燥を予防する
水などをこまめにお口に含み、保湿するよう心がけてください。また、室内の乾燥もお口の乾きにつながりますので、湿度にも注意が必要です。室内が乾燥している場合は、冷暖房を調節したり加湿器を使ったりして湿度を上げましょう。
⑥お口の周りの筋肉や舌を動かす
人と会話したり、お口や舌のトレーニングを行うと唾液の分泌が促されます。
⑦唾液腺をマッサージする
主な唾液腺である「耳下腺・顎下腺・舌下腺」を両手でマッサージすることもドライマウスの対策としておすすめです。
⑧カウンセリングを受ける
生活習慣やストレスもドライマウスの原因となります。カウンセリングを受けることで、生活習慣の改善やストレスの解消などを図れます。
ドライマウスを放置した場合のリスク
唾液が少なくなると、唾液がもつ自浄作用や粘膜保護作用などの働きも低下してしまいます。ドライマウスを放置していると「虫歯・歯周病・口臭・摂食障害・嚥下障害・味覚障害・発音障害・舌痛症・粘膜疾患」などを引き起こしたり悪化させたりするリスクが高まります。
また、お口は常に外界にさらされていて、通常は唾液などに含まれる免疫物質がウイルスや細菌の侵入を防ぐ役割を果たしています。しかし、唾液が少なくなると免疫物質まで減ってしまい、お口からウイルスや細菌が侵入して感染症にかかりやすくなります。
ドライマウス対策にはインプラントも検討しよう
加齢によって咀嚼筋の筋力低下や歯が抜けるなどしてお口の中の機能低下が起こり、奥歯がなく噛む力が衰えている場合には、インプラントを検討するのも一つの方法です。
インプラントは入れ歯よりも噛む機能の回復に優れていて、天然歯のように噛むことが可能になります。しっかりと噛めるようになれば唾液の分泌が増えるため、ドライマウスの改善につながります。
まとめ
ドライマウスは、さまざまな原因によって唾液の分泌が減ってしまうことで起こります。お口が乾くだけでなく、舌がひび割れる・食べ物の味がわかりにくくなるなどの症状を引き起こす恐れもあるのです。
ドライマウスになった場合の対策としては、原因となっている病気の治療をはじめ、よく噛んで食べることや、唾液腺をマッサージすることなどが挙げられます。対策しないで放置していると、虫歯などの新たな病気を引き起こすリスクが高まるため注意が必要です。
噛む力の低下がドライマウスの原因になっている場合は、よく噛んで唾液をたくさん出せるようにインプラントにするのも一つの方法です。
この記事で、ドライマウスに関するあなたの疑問や不安が少しでも解消されたら幸いです。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開