■目次
インプラント治療の総額費用の相場
インプラント治療費は治療する歯の位置や本数によって大きく変わります。3つのケースに分類して費用の相場を紹介します。
前歯1本あたり
インプラント治療を始める前に検査や診断を受ける必要があります。必要な費用として15,000~50,000円程度の金額がかかります。
検査が終われば、実際にインプラントの治療へ移行します。インプラント手術の相場は、150,000~350,000円です。加えて、インプラントの上に被せる人工歯を製作するのに必要な金額が50,000~200,000円ほど上乗せされるため、最終的な前歯1本あたりの費用は、およそ300,000~400,000円です。
2024年3月 株式会社メディカルネット調べ
奥歯1本あたり
奥歯の場合も前歯と同様に、検査・診断に15,000~50,000円、インプラント手術に150,000~350,000円がかかります。基本的に前歯と同じ費用感で、被せ物を含めた費用も300,000~400,000円が多く、前歯の費用と同程度になります。
ただし、奥歯にインプラントを埋入する場合は、人工歯の費用が50,000~180,000円程度と、前歯に比べて安くなることもあります。
2024年3月 株式会社メディカルネット調べ
すべての歯
インプラント治療は、全ての歯を失った場合であっても対応が可能な治療法です。ただし、事前の検査・診断にかかる費用は適用する歯が1本の場合と同じですが、インプラントの手術費用に関しては、1,200,000~1,800,000円と大きく値上がりします。
また、人工歯の製作にかかる費用については、60,000~1,800,000円と治療の内容により大きく変動します。全体の治療費とはおよそ2,000,000~2,500,000円と多額の費用がかかる可能性がある点は留意しなければなりません。
2024年3月 株式会社メディカルネット調べ
インプラント治療の総額費用が高額になる理由
インプラント治療には高額な費用がかかりますが、主な理由としては、以下の3つです。
基本的に公的医療保険適用外だから
失った歯の機能を回復するだけであれば、従来の治療法である入れ歯やブリッジでも可能です。インプラントは、噛むという機能面に加えて審美面も重視した治療法であるため、公的医療保険の適用外となります。患者さんが治療費を全額負担することになり、金額も値上がりします。
インプラントの治療でも公的医療保険の適用が可能になるケースがあります。病気や事故の影響で広い範囲の顎の骨を失った場合や、先天的な疾患によって1/3以上の顎の骨が失われている場合であれば、公的医療保険によるインプラント治療が可能です。
インプラント自体が高いから
インプラントは人体に対して影響の少ないチタンやジルコニアなどの高価な素材を使用します。インプラントを製作するメーカーは多く、より信頼できるメーカーの製品を利用する場合は、多額の費用がかかります。
インプラント治療は天然歯に近い使用感が実現できることが大きな特徴です。より質の高い治療を求める患者さんが多くなります。ただし、質の高い治療には良い素材・設備・技術が必須です。こうした観点からインプラント治療に必要な金額が高くなるのは当然なことです。
設備にお金がかかるから
インプラント治療には高度な治療技術が求められますが、インプラント治療を受けるための設備も重要です。手術に際して徹底された感染対策が必要となるため、インプラント治療を行う医院は、オペ室などの設備投資をするなど多大なコストがかかっています。
インプラント治療を行うにあたって歯科医院側も多額のお金を払う必要があるということです。設備を整えながらインプラント治療で利益を出すために治療費を高く設定しなければなりません。
インプラント治療の総額費用の高さに不満を感じる人は多い【調査結果】
国民生活センターが2019年に発表した資料によると「インプラント治療の満足な点および不満な点の上位5位」という項目で不満点の1位となったのは「治療費が高額」という回答で、その割合は全体の37.0%を占めていました。
ちなみに、不満点の2位となった「インプラントやインプラントに載せた人工の歯が折れた、欠けた」という項目の割合は、全体の6.4%でした。インプラントの治療費に不満に感じる人の割合が突出して多いことが分かります。
参考:国民生活センター
インプラント治療の総額費用を安くする方法はない
インプラント治療のために医療機器や設備を整えることも多くの費用がかかります。インプラント体そのものも高価であり、治療に必要な全体のコストはどうしても高くなってしまいがちです。
基本的に公的医療保険が適用されることもないため、患者さん側で費用を抑えることは難しいです。
インプラント治療の総額費用は医療費控除の対象になる
インプラント治療を受ける際には「医療費控除」を利用することができます。医療費控除とは、1年間で支払った医療費が100,000円を超えている場合に、確定申告で医療費控除を申請することによって、税金の還付を受けることが可能です。
インプラント治療には高額の費用がかかるため、医療費控除を受けることによって、数万円から数十万円程度の還付が受けられます(所得により大きく変動します)。直近1年間だけではなく、過去5年まで遡って申請を行うことも可能です。治療に伴う金銭的な負担を減らすためにも、インプラント治療を受ける際には、医療費控除をぜひ検討しましょう。
参考:国税庁
まとめ
インプラント治療は基本的に公的医療保険の適用外となるため、治療費が高くなります。インプラント自体が高額な素材を使っていたり、歯科医院側も設備投資や衛生管理に多くのコストをかける必要があり、費用が高くなりやすいです。
インプラントの治療費を直接的に安くする方法はないものの、医療費控除を利用することによって、実質的な負担を抑えられる可能性はあります。さらに、まとまった金額を一度に支払うのが難しければ、歯科治療の際に利用できるローンである「デンタルローン」を利用するという手段もあるため、自分に合った方法で負担を減らせるようにしていきましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。