第62回 春季日本歯周病学会学術大会
視察レポート

第62回 春季日本歯周病学会学術大会について

春季日本歯周病学会学術大会春季日本歯周病学会学術大会

2019年5月24日(金)から25日(土)の2日間、横浜市中区の神奈川県民ホール、ワークピア横浜、横浜産貿ホールの3会場において、第62回 春季日本歯周病学会学術大会が開催されました。今年度は「低侵襲・高効率の歯周治療」をテーマとして掲げ、新たな試みとなる歯科衛生士特別講演(スイーツセミナー)なども開催され、沢山の歯科衛生士の来場がありました。

シンポジウム、スイーツセミナー、市民公開講座など、魅力的な企画が満載で、日本の暑さに負けないくらい熱気のある催しとなりました。

講演レポート

低侵襲・高効率の歯周補綴

低侵襲・高効率の歯周補綴
座長 :
申 基喆 氏(明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野)

5/25(土)のシンポジウムⅡでは、「低侵襲・高効率の歯周補綴」をテーマに、西堀 雅一 氏(西堀歯科医院)、大久保 力廣 氏(鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座)、東 克章 氏(東歯科医院)が講演を行いました。シンポジウムでは用意された座席が満席になるほど、多くの聴講者の関心を惹く内容でした。

低侵襲、高効率の歯周治療 インプラントを利用した歯周補綴

講演者 :
西堀 雅一 氏

歯科医師の西堀 雅一氏の「低侵襲、高効率の歯周治療 インプラントを利用した歯周補綴」の講演からシンポジウムⅡがスタートしました。

西堀氏は過去の研究報告などから「歯周病によって抜歯する割合は減っているが、歯が割れることにより抜歯する割合が最近増加している」、「歯の神経を取ってしまうと歯が割れやすくなり、歯を失うリスクが10倍上昇する」と言及し、歯を削らない治療を選択する重要性を強調していました。

矯正歯科治療による噛み合わせの修正や、ブリッジではなくインプラントによる歯の欠損部分の治療を選択することで、歯が割れることによる歯の喪失リスクを減らすことができる、と解説していました。
歯を長持ちさせるために、歯周病の炎症をコントロールするだけではなく、力も上手くコントロールする大切さを聴講者が実感するきっかけとなりました。

歯周病は未病のサイン~未病改善は歯周病の予防と治療から~

歯周病は未病のサイン~未病改善は歯周病の予防と治療から~
座長 :
五味 一博 氏(鶴見大学歯学部歯周病学講座)

5月25日(土)、一般市民向けの講演が行われました。講演者は花田 信弘 氏(鶴見大学歯学部探索歯学口座)で、血管内に侵入した歯周病の原因となる細菌が、癌や認知症、関節リウマチなど、様々な生活習慣病の発症に関わっていることを解説していました。会場には、学会会員を含め、沢山の一般市民の方が講演を聴きに来場しました。

花田氏の講演の中では、栄養状態と虫歯や歯周病発症の関連性についても述べられていました。虫歯は三大栄養素の炭水化物・脂質・タンパク質のうち、炭水化物の摂取が全体の60%を越えてくると虫歯になりやすいと説明していました。

一方、歯周病に関しては、ビタミンとミネラルを含めた五大栄養素の偏りが歯周病の発症に関連することを言及していました。歯周病の患者さんにおいて、マグネシウムの摂取が少ないことなどを例に述べられていました。

第62回 春季日本歯周病学会学術大会に参加して

第62回 春季日本歯周病学会学術大会に参加して

今回の春季日本歯周病学術大会への参加を通じて、歯周病の原因となる細菌が全身に予想以上の悪影響をもたらすことを改めて認識しました。

栄養状態の乱れが歯周病を引き起こすという一つの考え方から、口の中の汚れを取る口腔内サポートだけではなく、栄養管理を含めた全身サポートが、歯周病の治療において重要視されてくると思います。

今後の歯科治療において、歯科医師と医師だけではなく、介護士や栄養士など、他職種との密な連携がより大切になっていくことを予感しました。

レポート:インプラントネット運営部