歯科医科連携の共通言語は検査値
- 座長 :
- 申 基喆 先生
- 講師 :
- 井上 孝 先生
歯科医科の連携の際に歯周病、インプラント周囲炎の病態が数値で表せていないと、医科との話ができないと述べられました。医科では、臨床検査値を基に診断、治療そして予後判定を行うため、歯科医科連携の共通言語は臨床検査値になるであろうという考えを示されました。その例として、インプラントを埋入することで、ドライマウスの患者さんに口腔内の改善が見受けられたという症例を挙げました。これは、インプラントを埋入することでよく噛むようになり、筋肉も動かされ唾液の分泌が改善されたと話されました。このような改善は感覚ではなく、数値で治療の効果を表し判断することにより、歯科医科連携へ繋がると述べられました。
超高齢社会の今、インプラントのこれからは、基礎疾患を持った患者さんが、どのようにインプラント治療を受けるのかを考えることが必要と話されました。
また臨床検査値について歯肉溝滲出液、または唾液の中から炎症性の物質が出てくる数値を医科と同じにし、しかも簡便にしていかなければならないと訴えられました。
実践知から考える口腔インプラント治療の将来展望
- 座長 :
- 申 基喆 先生
- 講師 :
- 高橋 慶壮 先生
現在のインプラント周囲炎は、明確な定義が定まっていないこと、歯周病患者に対し、インプラント治療を適応する頻度が増すにつれて、インプラント周囲疾患に関することが社会問題になっていると話されました。講師は、インプラント治療の役割、将来展望について、日々の臨床で見てきた患者さんの臨床の観察結果を説明されました。
歯周炎の進行も様々で、それを解析しても非直線的に進むことがあり、インプラント周囲炎に関しても同様であると述べられました。
インプラント治療後17年間経過した今でも、トラブルなく良い状態を維持できている患者さんの症例を発表されました。うまく維持するためには、技術だけではなく患者さんとの信頼関係が大事であり、良い信頼関係が築けないと全身の健康も維持することも難しく、インプラント埋入後にリスクが高まると説明されました。
また、インプラントを埋入しなければ、インプラント歯周疾患は起きないため、基本的には歯周治療をしっかり行い、なるべくインプラント治療は先伸ばしにしていくべきだと考えを述べ、良くない例に、インプラントを複数埋入した患者さんのX線写真を紹介しました。複数のインプラントを埋入する場合は、毎回埋入したところすべて清掃するのが難しいため、インプラント歯周疾患が起こりやすく感染性の割合も上がると説明されました。
特に全身疾患や高齢者に関しては、感染のリスクが高いため、インプラントデンチャーなどで本数を減らして対応するべきであると強調されました。スライドにはインプラントの本数を減らし、インプラントデンチャーで対応した症例の写真が映し出され、取り外し可能であれば、清掃性があがると述べられました。
講師は最後に、現在のインプラント治療は万能ではないが、非常に有益な治療であり、今後もかなり広く浸透していく治療であると述べられました。そして、治療時にリスクの管理や評価をより科学的に数値として出すことを提示し、術後に関してはもう少し考えるべきであると述べられました。