インプラント治療を行う前に、天然歯がある場合は、抜歯の判断を行わなければならない事も多く、その診断基準においては、今なお論議の的です。今回のシンポジウムでは、歯周病学、保存修復、歯内療法の各専門医から、抜歯基準について講演されました。
インプラント治療における抜歯基準を再考するー歯周病学の立場からー
- 講師 :
- 水上 哲也 先生
インプラント治療が行われるようになり、快適にインプラントを使用している患者さんがいる。しかし、インプラント後の上部構造のトラブルや、インプラント周囲炎など問題点も出てくるようになった。ここ数年インプラント治療は万能ではない状況という問題を挙げられました。
インプラント治療を行う前に、天然歯の余地性に見込みがある場合は歯を残し、余地性がない場合は抜歯になる。その際に、余地性がないと決めている基準は正しいのかということを歯周治療の立場から、抜歯基準の再考について述べられました。
例として、過度の動揺、著しい骨吸収、Ⅲ度の分岐部病変などの場合、即抜歯かというと、さまざまな条件を考慮して歯周治療を行うことにより、歯の保存ができると言われている。歯は口腔内に存在し、噛めないという状態は保存している状態ではないと強調されました。
現在は、余地性の乏しい歯を戦略的に抜歯し、インプラント治療を行うことが多くなっている。一方、再生治療の発達によって歯の寿命も延びてきたと言及されました。
診断を行う際は、デンタルX線やプロービングだけではなく、CBCTで評価をするなど工夫をして適切な治療を行うことで、侵襲性歯周炎など余地性の低い歯も寿命を延ばすことが可能であると述べられました。
また、外科処置の回数や審美性、咬合力の低下などを総合的に判断し、再考することで、どんな歯でも残して患者さんに迷惑をかけてはならないと述べられました。