第37回 IDS(ケルン国際デンタルショー) 視察レポート

第37回 IDS(ケルン国際デンタルショー)

第37回 IDS(ケルン国際デンタルショー)

2年に1回ケルンで開催される、IDS(ケルン国際デンタルショー)は歯科業界では、世界最大の展示会で、今後の歯科業界の指針となるイベントでもあり、今回で37回目を迎えます。各企業のブースではそれぞれの最新機器や技術が展示されており、中にはまだ未発表のものなどもあり、興味深いものばかりでした。

会場となるケルンメッセ会場はケルンメッセ駅の目の前にあり、広さは東京ドームの12個分、会場は大きく11に分かれており、参加国は60か国、参加企業は2300社、来場者は前回の2015年より12%増え155,000人と世界規模の大きさで、日本だけでは感じられない発見が数多くありました。 初日は歯科関係者のみの公開で、IDで入場できるようになっています。2日目は一般公開とされており、初日も人が多いと感じましたが、前日よりもさらに多くものすごい熱気でした。著名な日本人の先生方にもお会いでき、案内や説明などをしてもらえる貴重な体験となりました。

【IDS公式サイト(英語)】
http://english.ids-cologne.de/ids/

IDS(ケルン国際デンタルショー)のVR写真

下の画像をクリックすると、VRが表示されます。360度VRパノラマ写真は、PCでマウスを全方位に動かしたり、スマートフォンでは端末を上下左右に動かしながら自由に動かして見ることができます。

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IDSの空気をVRで体感!

※PC推奨環境:Chrome 49以降 / Safari 10以降 / IE 11以降

※スマートフォン推奨環境:iOS 9.3以降 / Android 56以降(一部対応していない端末もあります)

開催地:ケルンについて

開催地:ケルンについて

IDS国際デンタルショーの開催地、ケルンは、ドイツではベルリン、ハンブルク、ミュンヘンに次いで4番目に大きな都市です。

ケルンはライン川の両岸に市街が広がり、市内には世界遺産であるケルン大聖堂があることで有名です。1248年に着工し、1880年に完成し、高さは157メートル、ゴシック様式の建築物としては最大級です。ケルン中央駅の目の前にあり、荘厳な雰囲気があり圧倒的な存在感でした。

注目を集めたメーカー・企業

Nobel Biocare

Nobel Biocare

インプラントの主力メーカーの一つであるノーベルバイオケアでは、IDSで新製品を発表することが事前に公式サイトにて告知されており、今回の最注目ブースのひとつでした。
ブースの大きさは企業により異なり、発展ぶりの指標のひとつにもなっていたのですが、昨年、Kavoデンタルシステムズと同じダナハーグループ傘下に参入したこともあり、2社のブースが隣り合い、一部を半ば共有するような形で広大な面積を独占していました。

発表が告知されていた新製品は、斜めに回転させながらネジ締めの作業ができる、インプラント用のドライバーでした。ネジの頭を包み込むような形状により、歯車の要領でネジを回すため、斜めに埋まっているインプラントも垂直方向からネジ締めを行う事が可能です。アナログですが画期的な発想で、ノーベルバイオケア独自のシステムであり、斜めに埋め入れることを特色とするAll-on-4の手術はかなりスムーズになりそうです。

しかし、最も興味深かったのはKavoとの合同開発による画像処理システムです。インプラントのシミュレーションも可能で、Kavoのスキャニング技術とノーベルバイオケアのガイドシステムがうまく融合した形です。まだプレリリースですが、年内の公開を予定しているそうです。

straumann

straumann

世界70ヶ国以上にインプラントを提供しており、現在世界シェア第1位のマーケットを持つストローマンも口腔内スキャナーを発表していました。

治療中にも操作が簡単にできるように、画面にタッチせずとも音声や手をかざすだけで操作ができ、フルカラーに対応しているところが従来との大きな違いでした。
スキャナーも小さめになっており、欧米人と比べて手や口が小柄なアジア人にも使いやすいものになっていました。

また、以前は連続する静止画でスキャンしていましたが、動画でスキャンしているので精度と速度が増しており、従来のスキャナーには必要だったパウダーを必要とせず、スキャナーがより簡単にできるようになっています。
持ち運びができることもこれからの治療の幅を広げていくものになります。

デジタル技術がどこの企業も重要視されているのがよく分かり、これからは印象を採るのではなく、口腔内をスキャンし、そのデータをもとにガイドや補綴物も作っておいてから、手術に臨めるようになるのだと思いました。

Dentsply Sirona

Dentsply Sirona

シロナは、ドイツの130年以上の歴史ある歯科用機器専門メーカーの一つで、シロナデンタルシステムズ株式会社と、デンツプライ三金株式会社は合併し、日本国内における会社名がデンツプライシロナ株式会社になりました。
Dentsply Sironaのブースでは、より精密に削り出しができるセレックで、被せ物の製作の実演を行っていました。

インプラント治療の埋め入れから被せ物を安全かつ正確に行うためセレックを使用します。CTやCAD/CAMから、口腔内を3次元の立体的なデータとして分析し、インプラントの治療計画を立て、インプラント埋め入れガイドの製作、インプラントを埋め入れ後の仮歯、被せ物の製作が可能です。

A.B. Dental

A.B. Dental

昨今インプラントメーカー業界において急成長を遂げているイスラエルですが、今回はイスラエルからの出展が急増し、2015年のIDSでは中東・アフリカ諸国を合わせて56社でしたが、今回はイスラエルだけで50社が出展していました。

その中でもA.B.Dentalは、昨年世界で初めての3Dプリントによるインプラントシステムを提供するイスラエルの企業です。3Dプリンターで歯のモデルを作成し、更にそのモデルに合わせた手術用ガイドも作製が可能です。スキャンデータはCTから取得するため、印象採得は必要ありません。

3Dプリンターやソフトウェア等は販売しておらず、CTスキャンデータをA.B. Dentalのサービスセンターへ送付するとインプラントと手術用ガイドが届くというシステムになっていますが、実際の手術まで手作業が発生せず、全ての準備がバーチャルで完結することは、医療における3Dプリントの可能性を強く感じさせるものでした。

また、同社は歯科インプラントに限らず、頭部や顎など、すべての骨の欠損部位に対応しているそうです。

最新デジタル技術の紹介

3Dプリンター

3Dプリンター

3Dプリンターの展示も多くみられました。3Dプリンターとは立体的なものを制作できる機械で、この技術を歯科分野に応用し、模型なしでマウスピース制作や補綴物を制作できるようになります。
補綴物などを制作する場合は、今までは削り出す方法が主でしたが、3Dプリンターの場合は薄い層を積み重ねることで形成していきます。

一度に数多くの構造物を制作することができ、単冠だけではなくフルブリッジも制作でき、それぞれに高低差があっても大丈夫、という時間短縮の大きな手助けとなりそうでした。インプラント治療などのガイドシュミレーションを作成したり、難症例の手術の練習としても使用できます。

口腔内スキャン、CAD/CAMでの設計、そして3Dプリンターを連携させることで作業スピードがあがり、正確性も向上します。また、スキャンした患者様のデータもデジタルで管理し、そのデータを元に必要なものを3Dプリンターで制作するので、模型を医院内で保管する必要が無くなるメリットもあります。

講演:Stratasys GmbH-How 3D Printing is changing Implant Practice

Stratasys GmbHによる講演

3Dプリンターのスピーチを聞きました。3Dプリンターは、主にインプラント治療や大がかりな外科治療などの練習やガイド制作などに利用されているという説明がありました。

VR

VR

歯科治療の様子をバーチャルで体験できるゴーグルです。 これはCOLTENE(コルテン社)のもので、ゴーグルにアプリをインストールしたスマートフォンを挟み、イヤフォンをつけると、根幹治療で使う器具や薬、治療の流れの様子が、口の中から観察できるような映像が流れています。

歯科従事者への教育や研修、治療に恐怖や不安を感じている患者様の心の準備を整え、治療を円滑に行うためのツールとしても使用できます。 他にもVR技術を発表している企業は多々あり、バーチャルリアリティーシステムを使用し、仮想環境下で歯科治療のトレーニングができたり、スキャンしたデータを使い治療計画立てたり、様々な治療にも応用できます。 

これらの技術が普及すれば、歯科医師の事務業務などが軽減し、より治療に専念できるようになる未来がすぐ近くにあると感じました。

予防歯科情報(歯科衛生士レポート)

GC

GC

MIペーストは、ミネラル(カルシウム、リン)や口腔内を中和作用と緩衝作用を持ちCPP-ACP(リカルデント)を含み今日では歯科衛生士にとてもなじみのある口腔ケア製品です。

MIペーストのフレーバーは、どの商品も味が良く選ぶ楽しさもありますね。日本ではヨーグルト味がありますが、ケルンの展示場では、ヨーグルト味はなく、フルーツ味がありました。

今回、MIペーストと一緒に展示されていたものは、ドライマウス用のジェルとMIペーストにフッ素が入ったMIペーストプラスでした。

MIペーストプラスは普段、低濃度フッ素とMIペーストをダブルで使用している方には一手間で済みますし、予防効果も更に上がるのではないか、と興味を持ちました。日本で見る日を楽しみに待っています。

EMS

EMS

エアフローブースはとても大きく、綺麗にたくさんのエアフローマスターが展示され、自由に使用が可能でした。

説明を聞いて、早速うずら卵をバイオフィルム、着色と見立てて使用しました。まず、驚いたのがフットペダルがコードレスで、とても使いやすいと思いました。うずらの模様は、パワーを調節しながら、スムーズに除去が出来ました。本体は、水の温度調節がタッチパネルでき、知覚過敏症の方にも優しく、スタイリッシュなデザインでした。

一台で、縁上、縁下の歯面清掃が可能で、エアフローパウダーは三種類(ペリオ、ソフト、レモン)がありました。

縁下用のチップも付属していて、プラスチック製で軟質素材でした。水平方向にエアーとパウダー、垂直的には水が出るので隣接面の根管面にもアプローチしやすそうでした。

IDS(ケルン国際デンタルショー)に参加して

予防歯科がメインテーマとされていた今回のケルン国際デンタルショー2017。東京ドーム12個分以上の広さを誇る会場は2日ではとても回りきることはできませんでしたが、光学スキャンや3Dプリント、VRなどの最先端技術の歯科医療への導入が目立っていたのが印象的でした。特に光学スキャナーはメーカーによって個性・特色が出てきており、それだけ技術が浸透してきていることを表していると思います。VRなどは、まだ実験的な試みが多く、今後どのように成長・導入されていくのかが興味深いです。

今回のデンタルショーは歯科医療のデジタル化において一つの転換点を示すものになっているのではないでしょうか。

次回はどんな傾向がみられるか、楽しみです。

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矯正歯科ネット レポート記事
【IDS視察レポート】http://www.kyousei-shika.net/kyousei_html/inspection/ids/
ハコラム記事
【初日】 http://www.haishasan.net/column/00262/
【速報】 http://www.haishasan.net/column/00264/
【視察終了】 http://www.haishasan.net/column/00263/