第35回 日本顎咬合学会学術大会・総会

新・顎咬合学-国民の健康に貢献する

日本顎咬合学会学術大会・総会について

2017年6月10日,11日の2日間、東京国際フォーラムにて第35回顎咬合学会が開催され、「新・顎咬合学-国民の健康に貢献する」というテーマで全国から歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士合わせて約5,000人が集まりました。学会全体では、依頼講演100講演、テーブルクリニック40講演、セットアップセミナー20講演、一般講演150講演の300題以上の講演と、80枚ものポスター展示発表が各棟で開催されていました。

会場の様子① 会場の様子②

開会式・特別講演

座長を務める学会理事長 上濱正先生の挨拶での壮大なオープニングで始まり、設立35年の記念大会ということで内閣総理大臣、衆議院議員、様々な学会や、企業など著名人の方々からの祝電も紹介されました。特別講演では、世界的に活躍している米国コロンビア大学副学長で、歯学部長を兼任するChristian S.Stohler教授から、今回の学会テーマにあるように、人生と健康と幸福と題して、口腔と生体全体との関連性や、世界的に見た日本の医療や高齢化社会など、これからあるべき歯科医療の未来についてなどの内容で、講演が行われました。

特別講演

開催されたセミナーのご紹介

ワンランクアップセミナー
考えよう インプラント埋入深度を決定する要因

講演者 :
田中 憲一 先生

インプラントの形状に合わせて、表面性状・ギャップの位置・骨吸収の関係を通して、ハイブリッドタイプ、スイッチングタイプのインプラントでの埋入深度は、何を基準にして決められるか、今までのコンセプトを振り返りながら、講演をされました。歯肉の厚さ、骨縁上、骨縁、骨縁下、骨の厚み、歯槽骨頂レベルなど等をそれぞれ理解し、どのような補綴物を付けられるのか明確にし、埋入する深さを考慮すると述べられました。

一回法・二回法などの、外科的主義というよりも、メーカーによるインプラント体の表面性状などのコンセプトや、マイクロギャップの位置、骨縁のどの部分に埋入するかにより、骨吸収が変わってくるので、「どういうファイナルを入れたいか、入れなくてはいけないか」という理由により、インプラント体の選択肢も変わってくるという考えも述べられていました。また、天然歯と同じようにブラッシングできること、周囲の歯と同じ形態にしていくというコンセプトも、重要だと考えているとお話されました。

ワンランクアップセミナー 考えよう インプラント埋入深度を決定する要因

メーカーシンポジウム
デジタル技術を応用した顎機能主導型インプラント治療の展望

講演者 :
小川 匠 先生

近年、インプラントや、CAD/CAMなどの普及により、従来の補綴物の選択肢が広がりつつあります。その中でも、インプラント埋入時の考え方は、外科主導型から補綴主導型へと変化を遂げてきています。

CAD/CAM技術の発展により、デジタル技術を応用した咬合の診断が可能となってきました。補綴主導型ということで、最終補綴の形に、どうインプラントを埋め入れていくかという課題の中、天然歯とインプラントが共存している場合では、加圧時の沈下量が異なるという実際の症例を交えての内容でした。

デジタル技術での下顎運動のデータから、加圧時にかかる天然歯の沈下量や、インプラントに応力がかからないようにしていくのかなどの、配慮をした補綴物製作が可能となったと述べられました。今後もデジタル技術を応用し、顎口腔機能を配慮したインプラント治療を考えていきたいという講演内容でした。

展示コーナー

89企業がブースを出展

企業ブースでは、現時点で最新のCAD/CAM、歯科材料メーカーや歯科関連書籍、口腔ケアグッズといった製品などの展示で89企業が参加していました。

89企業の出店するブースコーナー

メディカルネットのブース

当社、メディカルネットもブースを出展し、「インプラントネット」「矯正歯科ネット」等の歯科ポータルサイトサービスの紹介や、インプラントの保証について、立ち寄った来場者の方々にお話を聞いて頂きました。

メディカルのブース① メディカルのブース②

主な企業のブース

2017年3月17日、国内でフッ素配合の上限は従来1,000ppmだったものが、1,500ppmまで引き上げられました。それに伴い、ライオン歯科材株式会社のブースでは、1,450ppmのフッ化物高濃度配合の歯磨き粉が紹介されていました。

また、Ivoclar Vivadentでは、今年のIDS(ケルン国際デンタルショー)で初めて発表されていたIPS e.maxシェードナビアプリ、5つのステップで簡単にシェードと透過性を決定できるアプリの展示や、IPS e.max Shadeなどが披露され、各ブース内は賑わいを見せていました。

ほかにも、フッ素塗布ができ就寝時に装着できるマウスピース、一人ひとりの症例に合わせてインターネットでオーダーができるアバットメントなど、実際に見て、触り、日々進んでいく歯科業界を肌で感じることができる内容となっていました。

様々な展示物とテーブルクリニック講演

テーブルクリニック講演

時間ごとに講演が行われ、常に賑わいをみせていたテーブルクリニック講演は、どの講演も定員オーバーで立ち見する人で溢れていました。

テーブルクリニック

そのほかの展示

同会場内では、ポスターによる研究発表の展示や、咬合器に関する展示、テーブルクリニックなども開催されていました。

80点もの研究発表ポスターの展示

▲80点もの研究発表ポスターの展示

咬合器の特設展示コーナー

▲咬合器の特設展示コーナー

第35回日本顎咬合学会学術大会・総会に参加して

今回の講演においてインプラントをテーマとする議題は9つあり、新たな技術や、歯科業界の今後について考えるべきことを発表されていました。そこでは多方面の医療分野が関わり、近年、急速な変化を遂げてきている歯科業界の現在を実感することができました。

日本では高齢化が進み、若い世代が医療の現場を背負っていく時代が近づいてきています。特に、医療の場面でデジタル化の発展が著しくなり、様々なエビデンスも証明されてきています。このような状況の中で、医療関係者は異なる分野であっても一丸となり、互いに理解しあい、医療において新たな定義が必要になっていくだろうと今回の学会を通じて感じました。

レポート:インプラントネット運営部
※講演の発表内容については、当サイトにおいて必ずしも保証するものではございません。