デンタル増田プラチナ通りクリニック 医院HP

5年前に根管治療を行った箇所。現在、病巣が大きく、咬合痛がある。
抜歯後CTを見ると顎骨内に大きな空洞ができている。
シミュレーション画像では、空洞のなかに5ミリ径のインプラントが浮かんでいるように見える。

患者様の症状から抜歯以外選択肢はないと診断する。
抜歯1週間後、インプラント埋入手術をする（遅延型即時インプラント）。
インプラントは埋入時、周囲の骨によって固定されていなければ「人工歯根」にならないため、大量の骨移植が必要と診断。どこから骨を調達するかが重要な問題である。
そこで考えた採骨は骨片を頬側部からブロック体としてとり、インプラント体頬側部にある空洞に、縦長なブロック体を横向きにして、押し込むようにいれる。
するとインプラントは固定された。

ジルコニアクラウン装着後の術後レントゲン写真をみると、十分の骨がインプラント周囲に造成されている。

術前CTでは残根があり、3ミリ程度の骨量しかないことがわかる。
インプラントには最低8ミリ以上の堅固な骨が必要となる。

シミュレーションCTで、5ミリ径、長さ10ミリのインプラントを想定。
その場合現状3ミリしかない骨量で、7ミリも上顎洞に突き刺さってしまうことになる。
上顎洞というのは単なる空洞で空気しかないため、サイナスリフトという手術法が相応しいと考えた。
治療方法は、想定部位の歯肉を剥離し、骨面が見えたら骨面の内側にある上顎洞粘膜を傷つけないように、骨に長方形状に切れ目をいれ離断し、その骨片をとりだす。
上顎洞の粘膜が見えて、骨縁からこの粘膜を剥離し、ゆっくりと持ち上げると、粘膜と骨面との間に空間ができる。
その空間に骨移植を行い、上顎洞に突出してくるインプラント体を移植骨で包埋する術式となる。

残根抜歯後1ヵ月後にサイナスリフトと同時にインプラント埋入手術を行った。
術後CTは、術後5ヵ月経過しジルコニアクラウン装着時のCT。
赤いラインは、長方形の骨片のラインであり、手術終了時にこの骨片をもとの位置に戻す。
赤は、もどした骨片が完全に治癒している状態を示している。
採骨は、下顎親知らずがあった部位からとって、その部位には人工骨を入れた。

術後CTや術後のレントゲン写真を見る限り、十分な骨量があるように思う。
すき間には、PRPを十分に染み込ませた人工骨をいれ非吸収膜で全体を包埋した。

術前正面から、装着されていたクラウンが脱落、残根状態となっている。
歯根部の象牙質は脱灰し、クラウンを維持させるだけの十分な強度がないため、無理して製作しても、長期に維持し難く治療費が無駄になってしまうと判断した。

一般に、残根を抜歯した場合、3つの治療法がある。
ブリッジ製作の場合、両側2本の天然歯を支台とし計6本のクラン連続体を作ることになる。
ジルコニアクラウンで作るのなら、費用的にもインプラント治療と差異がなく、天然歯削合という犠牲を伴う。患者様のご意向で入れ歯ではなく「インプラント治療」を選択された。

抜歯後、すぐインプラント埋入手術をする（即時インプラント）。
術前シミュレーションCTでは、4ミリ直径のインプラントがギリギリ適合すると判断（3ミリ直径のほうが手術はより安全であり容易ではあるが、インプラントが骨結合後破折する場合があるため）。

術後CTでは、ほぼシミュレーション通りにできている。
この後、正式的に歯を制作し装着していく。仮歯状態でも患者様から満足の声をいただいた。
静脈鎮静法、PRP法を用いた。術前より血圧が高く、静脈鎮静により下降し安全に手術が行えた。