インプラント治療で使用されるレントゲンの種類と比較

CTは3次元(立体)、レントゲンは2次元(平面)で撮影されます。インプラント治療の際にレントゲンに加えて歯科用CTも使用する意味とは?インプラント治療では、2次元と3次元の撮影の必要性を解説!

更新日:2021/12/02

■目次

  1. インプラント治療とは?
  2. 2次元(平面)画像のレントゲン装置
  3. ■ 全顎総覧撮影用X線装置「パノラマ」
  4. ■ 口内法撮影用X線装置「デンタル」
  5. 3次元(立体)画像のレントゲン装置「歯科用CT」
  6. どのように使い分けられるの?
  7. 「歯科用CT」だけでは診断できないの?

インプラント治療とは?

インプラント治療とは?

インプラント治療は、あごの骨に人工歯根チタン製)を埋め入れる外科手術が必要です。安全に外科手術を行うためには、術前に治療する部位の周囲の組織について検査し、細部の情報を得ることが大切になってきます。その検査の方法の一つにレントゲンがあります。レントゲン写真からは、目に見えないお口の情報を得ることができるため、診断や治療計画の立案に役立ちます。
歯科で使用するレントゲンは、2次元(平面)画像と3次元(立体)画像がありますので、インプラント治療でどのように用いられているのか、ご紹介します。

2次元(平面)画像のレントゲン装置

■ 全顎総覧撮影用X線装置「パノラマ」

「パノラマ」は、1枚のフィルム(約15cm×30cm)に、あごの骨・歯・歯列・鼻腔・上顎洞・顎関節部などの、全体の総覧(パノラマ)像を確認することができます。

「パノラマ」の特徴
・鼻から下あごまでの大まかな全体像を把握することができる
・画像に歪みが伴うため、実際の位置や形を詳しく診査することは難しい
・平面の画像であるため、神経の走行位置や骨の厚みなどを、正確に把握することは難しい

「パノラマ」は以下の2種類に大別されます。
1. 回転断層パノラマX線装置
回転断層パノラマX線装置は、顔の周りを撮影用カメラが回って、1枚の画像に上あごと下あごを写す装置です。

2. 口内線源パノラマX線装置
口内線源パノラマX線装置は、上あご、または下あごをそれぞれを別のフィルムに写す方法や、1枚のフィルムに上あごと下あごを写す方法がある装置です。

■ 口内法撮影用X線装置「デンタル」

口内法撮影用X線装置「デンタル」

「デンタル」は、1枚の小さなフィルム(約3cm×4cm)に、撮影した2~3歯とその周囲組織を詳しく確認することができます。目的の部位を鮮明に写すことができるため、「パノラマ」よりも歯やその周囲組織をさらに詳しく確認する必要がある場合に撮影します。
「デンタル」は、必要部分だけを撮影する場合と、「パノラマ」の代わりにお口全体を10~18のブロックに分けて(10・14・18枚法などと呼ぶ)撮影する場合があります。10~18枚法は、インプラント治療と平行して、虫歯や歯周病の治療のために詳しい診査や診断が必要な場合と、歯科医師と患者様自身が個々の歯の細部まで把握するために撮影します。

「デンタル」の特徴
・画像に形に多少の歪みが伴うこともあるが、個々の歯やその周囲組織を詳しく診査できる
・部分的な画像であるため、歯やその周囲組織以外の把握は難しい
・平面の画像であるため、骨の厚みを正確に把握することは難しい

3次元(立体)画像のレントゲン装置「歯科用CT」

3次元(立体)画像のレントゲン装置「歯科用CT」

■ コーンビームCT「歯科用CT」
「歯科用CT」は、あらゆる角度からお口全体の状態を確認することができます。体の周囲から方向や位置を変えてX線をあてて撮影し、そのデータをコンピュータ処理することによって3次元の立体画像や断面図を作成することができます。
神経や血管の走行位置や骨の厚みなど、「パノラマ」や「デンタル」の平面のレントゲンでは分からない部分も、「歯科用CT」であれば精密に把握することができます。さらに、歯科用CTの立体画像上では、手術のシミュレーションが行えるため、的確な治療計画を立てることができ、手術中に神経や血管を傷つけるような偶発事故を防ぐことにも役立ちます。
※なお、「医科用」CTでも断面図を確認することはできますが、コンピュータ処理による立体画像作成や手術のシミュレーションができません。

また、インプラントを埋め入れる手術の前にしっかりと診査することは、手術時間を短縮でき、手術後の痛みや腫れを軽減することにつながります。インプラント治療前に歯科用CT画像で確認しておくことは、患者様の体への負担を最小限にするためにも重要です。
「歯科用CT」の特徴
・お口全体の状態を、立体画像であらゆる角度から審査することができる
・コンピュータで解析することで、骨の厚みや硬さや神経や血管の走行位置を確認できる
・外科手術のための、精密な診査と診断および、治療計画立案を助ける
・「パノラマ」や「デンタル」に比べ、費用負担が大きい

どのように使い分けられるの?

現在のインプラント治療は、2次元(平面)で確認できる「パノラマ」か「デンタル」のどちらかを撮影し、おおまかなお口の状態を確認した後に、3次元(立体)で確認できる歯科用CTを撮り、精密な診査・診断を行って、治療計画を立てる方法で進められています。しかし、お口の状態や歯科医師と患者様の話し合いにより、「パノラマ」、「デンタル」、「歯科用CT」のすべてのレントゲンが必要となる場合もあります。どのように治療を進めるかについては、担当医としっかりと相談しましょう。

インプラント治療と保険
インプラント治療は、健康保険の適応外となるため、自由(保険外)診療となります。したがって、インプラント治療のために撮影するレントゲン写真代は、全額自己負担となります。
レントゲンにかかる費用の相場…15,000~30,000円

「歯科用CT」だけでは診断できないの?

「歯科用CT」だけでは診断できないの?

お口の中の情報を細かく得ることができる「歯科用CT」さえ撮影しておけば、「パノラマ」や「デンタル」は必要ないのではないでしょうか。

インプラント治療を行った後は、歯科で定期的なメインテナンスを受けておくことが必要です。そうすることで、インプラントが長期的に安定した状態で使い続けられるとされています。歯科で受けるメインテナンスの項目の中には、レントゲン写真での診査があります。インプラント治療前に撮影したものと同じ規格で再びレントゲン撮影を行い、インプラント部位の経時的変化を比較します。その際は、費用負担が大きく、コンピュータ処理する時間がかかってしまう「歯科用CT」ではなく、「パノラマ」や「デンタル」を使用して確認することが多いようです。よって、術前に「歯科用CT」だけでなく、「パノラマ」や「デンタル」などでお口の状態の記録を残しておくことは、術後の診断にも役立つのです。

>>歯科医院で行うメインテナンスとは?

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。