インプラントのトラブル防止!治療前の検査各種

インプラント治療は、歯茎を切って顎の骨にインプラントを埋め込む外科手術が必要です。口腔内診査だけでなく、血液検査や血圧測定など、実施される検査項目は歯科医師の判断によって患者さんごとに異なります。検査の必要性を理解し、スムーズに検査や治療を受けられるようにしましょう。

更新日:2020/12/24

■目次

  1. インプラントのトラブル防止!治療前の検査各種
  2. 問診
  3. 口腔内診査
  4. パノラマ、デンタル撮影
  5. CT撮影
  6. 血液検査
  7. 血圧測定
  8. 尿検査
  9. アレルギー検査

インプラントのトラブル防止!治療前の検査各種

インプラント治療は、歯茎を切って、顎の骨にインプラントを埋め込む外科手術が必要です。外科手術を問題なく行うために、治療を始める前に、歯やお口の中の状態はもちろんのこと、全身の健康状態を把握しておくことが大切です。
また、ご自身が心配に思っている症状や健康問題がある場合、どの検査を受けるとインプラント治療の可否が判断されるのか、事前に知っておくことも大切です。
ここでは、インプラント治療前によく行われる検査項目についてご紹介します。

なお、実施される検査項目は、歯科医師の判断によって歯科医院ごと、患者さんごとに異なります。

問診

問診は、これから行う検査項目や治療方針を決める上で非常に重要です。
適切な診断や治療法の提案を受けるために、自分自身の情報をしっかりと伝えおきましょう。

既往歴、現病歴の有無
過去にかかったことのある病気や、現在かかっている病気の有無について歯科医師が把握する必要があります。
インプラントを埋め込む外科手術では、痛みや出血を抑えるために局所麻酔を使ったり、術後の感染や痛みを防ぐために痛み止めや抗生物質などの内服薬を服用します。

歯周病はもちろんのこと、全身疾患の状態や服用薬を歯科医師が把握しないまま外科手術を行うと、全身状態の悪化や、埋め込んだインプラントが骨と結合しない、顎骨壊死などのトラブルが起こり得ます。
歯科医師からの質問に該当する疾患をお持ちの場合は細かく伝えるようにしましょう。
服用している薬を正確に伝えるために、おくすり手帳を持参しておくと良いでしょう。
場合によっては治療方法を検討するために、かかりつけの病院の医師に連絡をとることもありますので、病院の連絡先も持参しておくと安心です。
歯科医師からの質問にない疾患をお持ちの場合も、念のためこの時に伝えておくと治療がスムーズに進みます。

>>インプラント治療が受けられない可能性のある方

アレルギーの有無
食べ物、金属、薬などによって、体調に変化が生じたことがあれば伝えましょう(たとえば、気分が悪くなった、湿疹がでた、下痢になったなど)。
原因が定かでない場合は、アレルギー検査を行うことがあります。
また、歯科治療を受ける際の歯科麻酔で気分が悪くなったり体調に変化が生じたことがある場合は歯科医師にご相談ください。

服用薬
服用しているお薬があれば、歯科医師に正確に伝えましょう。
処方されるお薬の場合は、薬局や病院でお薬と一緒に渡される薬の説明書、おくすり手帳、もしくはお薬自体を歯科医師に見せましょう。
市販の薬で日常的に頻繁に飲む薬がある場合も、持参しておきましょう。

外科手術の際に服用するお薬と重複していないか、飲み合わせが悪くないかなどのチェックが行われます。

【注意】これまでに骨粗鬆症や癌で注射薬や内服薬などの処方を受けた方は、必ず歯科医師に伝えましょう。薬や期間の調整をせずに外科手術を行った場合に、顎の骨が壊死する恐れがあります。

>>インプラント治療で服用するお薬について

口腔内診査

歯周病の有無
重度の歯周病があると、インプラントと骨が結合しないこともあります。
お口全体の状態を確認し、外科手術前に治療すべきところはインプラントを埋め込む外科手術の前に治療を行います。また、インプラント治療と並行して治療できるかどうかを診断します。

噛み合わせや、顎関節、粘膜などの状態
噛み合わせや、顎関節、粘膜などの状態を確認し、異常が見つかれば事前に適切な治療を行います。

唾液の検査
唾液の検査では、主に唾液の量や、質、虫歯菌、歯周病菌などについて調べ、虫歯や歯周病のリスクを知ることができます。
インプラントは、虫歯にはなりませんが、歯周病と似た症状が生じるインプラント周囲炎になることがあります。
状態を把握することで、より効果的な治療と予防を行うことができるでしょう。

>>インプラントを長持ちさせるために - インプラント周囲炎

パノラマ、デンタル撮影

パノラマ(イラスト上)」は、鼻から下顎までのおおまかな平面の全体像を把握することができます。

デンタル(イラスト下)」は、2~3歯とその周囲組織の平面像を詳しく確認することができます。歯科医師の判断により、いずれか一方を撮る場合と、両方撮る場合があります。

>>インプラント治療で使用されるレントゲンの種類

CT撮影

CTは、顎の骨の厚みや高さ、神経や血管の走行位置など、お口全体の状態を立体画像であらゆる角度から診査できます。そのため、神経や血管の損傷、貫通などのトラブルを軽減できると考えられ、インプラント治療を受ける多くの方がCT撮影を受けています。
また、歯科医院によっては、そのCTの結果から埋め込む予定のインプラントの太さや、長さ、位置、角度などがシミュレーションできるソフトを設備しているところもあります。
CTを撮影することで治療前に入念にお口の中の診査や診断ができるため、偶発事故の確率を低減することができます。

>>CT撮影が必要となるのってどんなとき?

血液検査

インプラントを埋め込む外科手術の前に、「血が止まりにくいことは無いか」、「外科手術を受けることができる体調であるか」など、全身の健康状態を把握しておく必要があるため、血液検査の結果データが必要となります。
血液検査をしてから1年以内の必要なデータが揃っていない場合は、その歯科医院、または近くの内科で検査を受けることがあります。なお、患者さんの年齢や、問診の内容、外科手術の範囲によっては行わないこともあります。

血圧測定

事前に何度か血圧測定をし、普段の血圧の数値を把握することがあります。
歯科医院では無意識のうちに緊張し、血圧が上昇する傾向にあるため、一定期間自宅での測定を指示される場合があります。
血圧が高い場合は、治療中に脳出血や脳梗塞などを引き起こす可能性がありますので、インプラント治療の前に内科で治療を受けることが必要となります。
また、平均血圧を歯科医院が把握することで、術中の血圧の変化によって治療の続行が可能かどうかの判断基準にもなります。

尿検査

重度の腎疾患があると、傷が治りにくいことや、血が止まりにくい、インプラントが顎の骨と結合しないことなどが考えられます。「長らく健康診断を受けていない場合」や「過去に尿検査で異常を指摘されたにも関わらず、定期な通院や検査を受けていない場合」に、尿検査の結果データが必要となることがあります。

尿検査をしてから1年以内の必要なデータが揃っていない場合は、その歯科医院、または近くの内科で検査を受けることがあります。患者さんの年齢や、問診の内容、外科手術の範囲によっては行わないこともあります。

アレルギー検査

埋め込むインプラントは、一般的にアレルギーがでにくいとされている「チタン」を使用しますが、患者さんによってはアレルギー反応が起きる場合があります。
問診で疑わしいアレルギー症状がある場合、治療前に血液検査や、パッチテスト、皮内テストなどの結果データが必要となることがあります。パッチテストや皮内テストなどを受ける場合は、皮膚科を受診します。
金属アレルギーについて心配がある方は、歯科医師に相談し、治療前にアレルギー検査を受けましょう。


インプラント手術に伴うトラブルを回避し、長期的に安定した状態で使い続けるためには、十分な問診や検査が重要となります。検査項目について不安や疑問があれば、担当の歯科医師に検査の必要性や疑問を説明してもらうようにしましょう。

患者さんのお口や全身の状態によって、記事の内容が異なる可能性があります。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。